木の色は、ひとつの茶色ではない。国産材を使った「森のクレヨン」

Browse By

「健全な森林を育てるには、私たちが木材を積極的に使うことが重要」と聞くと、意外に感じる人がいるのではないだろうか。私たちは森林破壊の問題をよく耳にするが、それは自然の回復力を上回るスピードで森林伐採などをしていることが原因であり、適切な伐採と木材の利用はむしろ、森林を継続的に手入れしたり、森林のCO2吸収量を維持したりするために必要なのだ。

林野庁によると、日本の木材自給率は2002年に18.8%まで落ち込んだものの、その後は上昇傾向で推移し、2020年には41.8%となった。(※1)日本の国土の約7割は森林で、木材としての利用に適した時期を迎えている木も多い。より多くの人が国産材への関心を高め、木材の利用を広げられるようなアイデアはないだろうか。

日本に拠点を置くデザインスタジオの「Playfool」は、国産材のなかでも、様々な理由から建材や家具材として利用されなかった木材を顔料として用いたクレヨン「Forest Crayons」を開発した。クレヨンに使われている木は、スギ、ホオノキ、ヒノキ、ウォールナット、オークなど様々だ。また、木の種類だけでなく、日焼けした木、緑青腐菌が繁殖した木、泥の中で長年埋もれていた埋もれ木など、木が育った環境によっても色が異なる点に着目して作られている。

木材クレヨン

Photography: Shot by Kusk

木材クレヨン

Photography: Shot by Kusk

このクレヨンは、林野庁補助事業の支援のもと、国産材の需要創出や利用拡大を促進するプロジェクト「WOOD CHANGE CHALLENGE」の一環で制作されたものだ。Playfoolは、2021年1月に開催された2日間のキャンプに参加し、森林の状況や木工の現場などを観察しながら、Forest Crayonsのアイデアを磨いた。

Playfoolは飛騨の貯木場を訪ねた際、そこにある様々な木材を見て、木の色は単一の茶色ではないことに気が付いたという。Forest Crayonsは、そういった木の個性を楽しめるようにしたいという想いから作られた。家具材や建材の規格から外された木材を使っているのも、一見欠陥があるように見える木材の価値を、新たな角度から捉え直したいという想いがあるからだ。

色合いにあえて均一性を持たせないというForest Crayonsの特徴は、オリジナリティ溢れる絵を描く際に活かせそうだ。Playfoolのサイトによると、クレヨンの販売開始時期は2022年の春頃を予定しているという。うららかな季節に、このクレヨンを持ってスケッチに出かけると楽しいのではないだろうか。

※1「令和2年木材需給表」の公表について:林野庁
【参照サイト】 Playfool | Forest Crayons

Edited by Erika Tomiyama

FacebookTwitter