近年、プラスチックごみの発生を避けるため、生分解速度の速いナチュラルな素材を使用したエコ製品が次々に生み出されている。しかし、せっかく素材にこだわった製品でも、他のプラスチックごみと共に埋め立てられてしまっては、土壌の微生物による分解は中々進まない。
どんなに環境に優しい素材も、適切に廃棄されなければその意味がなくなってしまう。そんな歯がゆさのなかから誕生したのが、履き終えたとき「思わず適切に土に還したくなってしまう」スニーカーである。
カナダで誕生したシューズ・Johnnyは、生分解可能な環境に優しい素材でできたスニーカーだ。最大の特徴は、スニーカーのソール部分にりんごの種が入っており、使用後に土に埋めると、りんごの木に育つことである。
生分解素材を100%使用したスニーカーは、履き潰したあとそのまま土に埋めることが可能。スニーカーは土壌の中で最長3年をかけて自然に分解され、最後には肥料でコーティングされたりんごの種が残る仕組みで、自然の条件が整えば種が発芽する。
また、利用者がスニーカーを土へ埋めても種が発芽しないケースがあることや、すべての利用者がスニーカーを埋められる状況にないことも想定し、Johnnyではスニーカーを販売するごとに植林活動も行っている。
また、Johnnyのソール部分には天然ゴムを使用しており、すり減って流出したソール部分は大地で肥料となる。従来のスニーカーでは歩けば歩くほど、ソールがマイクロプラスチックとなり環境を汚染してしまう問題があったが、Johnnyにはその心配がないのだ。
その他にも、撥水加工のために自然由来の蜜蝋を使用する、靴底には消臭効果とクッション性を備えた天然のコルクを使用するなど、Johnnyには、機能性とエコフレンドリー性を両立させるための、様々な工夫がなされている。
さらに、Johnnyでは素材に拘るだけではなく、フェアトレード素材を採用したり、生産過程でCO2の排出をできるだけ抑える工夫をしたり、輸送による環境への負担を最小化したりするなど、スニーカーを環境に優しい存在にするべく様々な取り組みを行っている。
ソールにりんごの種を入れることで、消費者がスニーカーを捨てるのではなく、自然へ循環させる導線をデザインするJohnny。クールでサステナブルな商品であることは言わずもがな、何より消費者がスニーカーとして心地よく履いて、土に埋める最後まで大切に楽しめるという点が素晴らしい。
私たちの生活には、スニーカーのようにどうしても消耗して買い換えなければいけないアイテムがあるが、Johnnyのように「捨てない」選択肢があれば気持ちよく消費ができるだろう。今後の広がりに期待したい。
【参照サイト】Johnny: The Shoe That Grows Into a Tree
【参照サイト】We Make Sneakers That Turn Into Apple Trees
Edited by Yuka Kihara