気候変動の悪影響を最小限に抑えるべく、世界では産業革命前と比較して世界の平均気温の上昇を1.5度以内に抑える努力が必要とされている。これを達成するためには、2030年までに、CO2を2010年度比で約45%削減しなければならない。
CO2排出削減の大きなポテンシャルを持つのが、発電分野だ。日本では、発電によるCO2の排出が他部門に比べ最も大きく、およそ40%を占める(※1)。 太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスといった再生可能エネルギーは、CO2を排出せずに発電できるため、CO2排出量削減に貢献できる。そんななか、日本政府は、この再生可能エネルギーの割合を2022年現在の20%程度から、2030年には約36〜38%まで増やしていく予定だ(※2)。
環境省のHPによると、私たち個人が再生可能エネルギーを導入する方法は2つある(※3)。1つは、再生可能エネルギー由来の電力に切り替えること。もう1つが、自宅に再生可能エネルギーの発電施設を設置する方法だ。後者の方法でよく知られているのは太陽光発電だろう。しかし、場所によっては日光が当たりにくく、導入に適さない建物も存在する。
今回は、自宅で再生可能エネルギー発電を行う際の選択肢を増やすアイデアを紹介したい。アメリカのデザイナー、ジョー・ドウセット氏が生み出した、自宅やオフィスに設置可能な風力発電機「Wind Turbine Wall」だ。
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この風力発電機は、壁に対して垂直に取り付けられるようになっており、設置する場所の広さに応じて、設備の大きさをカスタマイズすることもできる。デフォルトの大きさで1年に1万キロワットアワーを発電でき、一般家庭の消費電力を十分に賄えるという。また、発電した電力は利用するだけでなく、バッテリーに蓄電することもでき、使い方によっては、発電した電力で収入を得ることも可能だそうだ。
デザインにも工夫が凝らされ、回転翼の形は、多様なデザインから好きな形を選択できる。現在ドウセット氏は、この「Wind Turbine Wall」の商用化を急いでいる。
この新たな発電方法は、単に再生可能エネルギー由来の発電量を増やすだけでなく、地方の電力転換にも役立つポテンシャルがありそうだ。日本では、再生可能エネルギー発電を普及させる上で、地方への送電線の確保が大きな課題となっている。「Wind Turbine wall」のような、個人や地域で自立的に発電できる設備を用いれば、再生可能エネルギー発電への転換も、よりスムーズになるだろう。
※1 全国地球温暖化防止活動推進センター
※2 西日本新聞 「再生エネ、30年度の倍増 基本計画決定、詳細は棚上げ」
※3 環境省 「再エネスタート」
【参照サイト】JOE DOUCET(公式)
Edited by Motomi Souma