インド流、タイルに大気汚染を「閉じ込める」方法

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パンデミックによって200万人もの命が失われた一方で、毎年420万人もの人が大気汚染によって命を落としているのをご存じだろうか。

大気汚染の問題が特に深刻化しているのが、インドだ。世界で最も大気汚染が深刻な20都市のうち14都市がインドにあると言われており、最近では、このような都市に住む10人のうち9人はWHOが定める健康基準を超過してしまっているという。

そんなインドで、大気汚染物質を閉じ込めた建築用タイル「カーボンクラフトタイル」が開発された。

Carbon craft tile

このカーボンクラフトタイルは、大理石のかけら・大理石パウダーやセメントに、大気汚染物質(重い金属や有害な物質を取り除いたもの)を混ぜ込んだもの。タイルに混ぜ込まれている大気汚染物質は以前Ideas for Goodでも紹介したAir Inkが収集したものだ。インド内の2つの州の伝統工芸士が手作業で製作しており、カラーバリエーションは黒・白・4色のグレーの6色である。タイルは焼かずに油圧プレスで生成するため、通常のタイルを作るのと比較すると製作時に使用するエネルギーは1/5。タイル1枚あたり3万リットルの空気をきれいにする計算になる、環境に配慮したタイルなのだ。

Carbon craft tile

カーボンクラフトタイルに使われる「大気汚染物質」は、廃タイヤを熱分解処分した際に出る再生カーボンブラック(rCB)である。カーボンクラフトは、大気汚染の大きな原因とされている乗り物や工場からの排気ガスに対する規制が整備される一方、廃タイヤ処分時の規制がないことに着目。今後電気自動車への移行が進む中で、インドだけではなく多くの国で廃タイヤが大きな問題になるのではないかと考え、rCBをタイルに混ぜ込むことで大気汚染を回避しようと試みたのだ。

創業者であるTejaによると、タイル開発に際して一番難しかったことは「タイルの色の標準化」だという。各地で使われる燃料が違えば汚染物質も異なるため、構成要素に違いが出て、素材の色にもバリエーションが出てしまうためだ。現在は伝統工芸士の力も得て、色の標準化に成功している。

Carbon craft tile

現在販売しているタイルは屋内使用に限られるため、カーボンクラフトは屋外でも使用できるものを作り始めたいと意気込んでいる。照明や屋内の小物、家具などへの応用も検討中だ。

大気を汚染する存在だった物質が美しいタイルとなって、人々の生活になじんでいく。建築業界を大きく変革していく、小さなタイルのこれからに期待したい。

【参照サイト】Carbon craft Design
【参照サイト】Mumbai Startup Creates Carbon Tiles Out of Polluted Air. Brilliant!
【関連ページ】大気汚染がアートに?バンガロール発、排気ガスから生まれたインク

Edited by Yuka Kihara

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