気候変動への危機感が高まるなか、様々な分野で化石燃料からの脱却が宣言され、自然エネルギーへの転換が進められている。そうした状況で、環境に配慮したベーカリー「Bread Alone」が2022年、アメリカで誕生した。
Bread Aloneは1983年、ニューヨーク州ボイスビルに、地域社会に貢献することを企業理念に据えて開業した地域密着型のベーカリーだ。今回のボイスビル店のリニューアルオープンは、地域活性化事業の一環でもあるのだという。
再オープンしたベーカリーは8,000平方フィートの広さで、化石燃料ゼロで稼働するネット・ゼロ・エネルギーを導入する。ゼロ・エネルギーとは、室内の大幅な省エネを行った上で、再生可能エネルギーを導入し、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指すエネルギーの循環方法だ。施設の総工費は日本円でおよそ5億円にのぼる。
View this post on Instagram
Bread Aloneはどのようにしてネット・ゼロを実現したのだろうか?その秘密は、電力の供給構造にある。366キロワットの太陽光発電装置を設置し、パン屋で消費するすべてのエネルギーを自家発電でまかなうことができるようになっているのだ。
この太陽光発電による電力は、施設内部の電気オーブン、IHクッキングヒーター、空気熱源ヒートポンプなど、パン作りに必要な設備すべての電力源となる。さらに、再生可能な廃材を燃料とする薪レンガオーブンでパンを焼いている。
View this post on Instagram
また、原料の確保にも工夫が光る。地産地消を第一に行っているのだ。地元のボイスビルで栽培された穀物を使ってパンを焼き、地域の生産者から仕入れた食材で調理する。荷物を運ぶときの二酸化炭素排出量も抑えた仕組みを取り入れているのである。
CEOのネルス氏は、今後のBread Aloneの戦略について、「意思決定の段階で環境への配慮を最優先させる予定だ」と話す。Bread Aloneがすでにキングストン本社にもソーラーパネルを設置済みであることからも、この方針に対する強い熱意を感じる。
環境問題は、世界の貧しい人にその影響がもっとも大きい。Bread Aloneは、従業員のための平等を実現し、地球への害を最小限に抑えるというシンプルかつ野心的な目的に取り組んでいる企業だ。日本でも、ネット・ゼロを目指す企業は増加している。こうした画期的な施設が次々と導入されるような社会を目指したいと強く思う。
【関連記事】ネットゼロとは・意味
【関連記事】食品ロスゼロの「捨てないパン屋」が「働かないパン屋」になった理由
【参照サイト】Bread Alone Bakery
【参照サイト】This bakery is the first in the US to run on 100% renewables
【参照サイト】環境省「ZEBPORTAL 用語集」
【参照サイト】平成30年度ZEB ロードマップフォローアップ委員会とりまとめ
Edited by Megumi