シンガポール、2030年までに食料自給率3倍へ

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2022年6月、世界的な飼料不足を背景に、マレーシアではコストや生産状況が安定するまで鶏肉の輸出を停止する方針が固められた。

その打撃を大きく受けたのが、マレーシアの隣国・シンガポールだ。シンガポールでは鶏肉の約3分の1をマレーシアから輸入していたため、国内は一時深刻な鶏肉不足に陥ったという。

シンガポールは国土が非常に狭く、東京23区と同等ほどの面積しかない。そのため耕地面積も少なく、野菜や米はもちろん、鶏肉や豚肉、魚まで、あらゆる食料供給を輸入に頼っており、国内の栄養需要の約10分の1しか自給できていないという。

ロシアのウクライナ侵攻や異常気象、新型コロナウイルス感染拡大によってもたらされた世界的なサプライチェーンの混乱は、そうしたシンガポールの脆弱性を改めて浮き彫りにしたと言えるだろう。

シンガポールでは、そうした課題への対策として、2019年から「30×30」と呼ばれる計画に着手している。同計画は、テクノロジーを駆使して、2030年までに国の栄養需要の30%を自国で生み出せるようにし、それによって輸入への依存度を減らすことを目的としたものだ。

10年間で食料生産を現在の3倍にする、というのは高すぎる目標に感じられるかもしれない。しかし、シンガポール政府は30×30計画の達成に向けたアクションを次々に実行している。

例えば、立体駐車場の屋上を代替農業スペースとして利用する、シンガポール南部の水域を養魚場に開放する、家庭菜園を奨励するために各家庭に野菜の種を配布する、といったことだ。

また、政府は食料生産分野への資金援助にも力を入れている。そうした資金援助を受け、シンガポールでは画期的なフード&アグリテックスタートアップが生まれてきている。

その一例が、Sustenir Groupだ。同社は、室内でプランターを垂直に積み上げ、狭い面積で作物を効率的に栽培する「垂直農法」を用いた農場経営を行っている。同社の農場では、24時間稼働のセンサーで湿度や温度、光などのデータを収集し、すべての野菜の健康状態を管理しているという。耕地面積が狭いからこそ、他国以上に画期的な農法が生まれつつあるのだ。

 

世界的な供給網の混乱が及ぼす影響は、シンガポール以外の国々にとっても他人事ではない。カロリーベースの食料自給率は40%に満たず、食料の多くを輸入に頼っている日本はなおさらだ。ピンチをチャンスに変えつつあるシンガポールに続いて、日本でも画期的な取り組みが増えていくことを期待したい。

【参照サイト】 What Singapore is doing to boost food security, from urban farms to homegrown vegetables
【参照サイト】 30 by 30|Singapore Food Agency
【参照サイト】How Singapore Aims to Secure its Food Supply With its ’30 by 30′ Plan
【参照サイト】Sustenir Group
【関連記事】ドイツ発、店内で野菜を育てる垂直農業テック「Infarm」都内スーパーに展開
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Edited by Motomi Souma

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