「反カルト」を掲げるフランス。人権侵害を許さないシステムとは?

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旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と政治家の癒着、親が信者である「宗教2世」の抑圧や苦境など、カルト問題を抱える現代。今回は、世界の事例からカルトとの向き合い方を考えていきたい。

フランスでは、1980年代から統一教会信者のトラブルが多発したことを受けて、カルト対策が国会レベルで論議された。その結果、2001年に「反セクト法」(Loi About-Picard)が成立。反社会的な活動を行った法人に対し解散、活動禁止、司法的監視などを命じることができるようになった。

この「反セクト法」の画期的な点は、10の外的基準に照らして「カルト」と判断する点である。たとえば、個人の精神的不安定化、法外な金銭要求、元の生活からの引き離し、身体への加害、子どもの強制加入などがその基準である。宗教の教えである教義の「良し悪し」で判断するわけではないため、信教の自由の侵害には当たらない、とされている。その団体が反社会的で人権侵害行為をしているかどうかが焦点となるのだ。

こうした法律もあり、フランスではさまざまな組織・団体がこれまでカルト対策に取り組んできた。その一つであるMIVILUDES(セクト逸脱行為監視取締り関係省庁委員会)はフランス内務省に所属し、カルトの監視・分析を行っている公的機関だ。MIVILUDESは、カルト被害に遭っている個人の家族などから通報を受けて介入し、必要があれば関係省庁に報告する。検察当局に報告し、司法手続きに入る場合も多い。例えるならば、カルト問題の総合窓口のようなものだろう。

MIVILUDESが問題視する「カルト」は、宗教にとどまらない。近年、健康、教育、経済など、さまざまな不安を抱える人々を狙った「市場」が拡大している。そうした不安につけこむものとして、代替医療や心理療法、障害児や不登校児への教育活動などにも潜んでおり、自己啓発セミナーなどの通報も目立つようになっている。こうした事例でもMIVILUDESは、その事業内容の是非ではなく、法外な金銭要求や精神的依存、強制性などを問題視し、正当な医療、教育などを受ける権利を奪い、自由を侵害するものとして、監視と介入を行っていく。

他方、フランスにはカルト被害者支援に取り組む団体もある。UNADFI(カルト犠牲の家族と個人を守る全国協会連合会)は、1982年に結成され、公的事業として承認されている団体だ。被害者支援活動や機関紙発行による研究・啓発活動とともに、近年では、政治とも関係の深い陰謀論などにも拡大して、広範な活動を展開している。

また、カルト被害者支援団体のCAFFESは、子どもや若者がカルトに巻き込まれる事例が頻発していることから、カルト対策・啓発動画や漫画を作って支援にあたっている。漫画は日本語を含めて9か国語のバージョンがあり、カルトのメカニズムや、そこに巻き込まれそうな場合に取るべき態度を自分自身で考えられるように構成されている。

このようにフランスでは、カルト問題の浮上とともに議論と対策が取られてきた。そこには、悩みを抱える個人につけこみ、人権を侵害する反社会的行為を許さないという毅然とした態度を見出すことができる。日本でもさまざまなレベルの「カルト」の被害実態を浮き彫りにし、宗教をタブー視せずに議論を活発化させ、行動につなげていくことが求められているのではないだろうか。

【参照サイト】MIVILUDES公式ホームページ
【参考文献】Rapport Rapport d’activité & étudesPDF POUR LE WEB (AOÛT 21).pdf
【参照サイト】UNADIFI公式ホームページ
【参照サイト】CAFFES公式ホームページ

Edited by Erika Tomiyama

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