新型コロナウイルスの蔓延によるパンデミック以降、アメリカでは何百万人もの人々が、自発的に仕事を辞めている。こうした現状は、「大退職時代(Great Resignation)」と言われてきたが、実は「大再編成時代(Great Reshuffle)」なのではないかという意見が、支持されるようになってきているという。
大再編生とは、退職した多くの人々はただ仕事を辞めたのではなく、今後についてゆっくりと考えるための人生の休暇を取っていたり、より自分らしい生き方ができる新しい仕事を探していたりするという見方のこと。事実、リモートワークなどが導入されたことにより、私たちは以前よりも、働くことに対して以前よりも「距離を取った視点」を持つことが可能となった。それによって、一人ひとりが「何のために働くのか」「どういった働き方が良いのか」という根本的な問いと向き合う絶好の機会を得ている。
こうした世の中の動きに対して、アメリカの大手食品・飲料メーカーであるペプシコ(PepsiCo)は、「グレート・リシャッフル・リセット(Great Reshuffle Reset)」というキャンペーンを行った。これは、同社の飲料ブランドであるソウルブースト(Soulboost)が実施したもので、今の仕事に疲れている人、少しの間休暇を取って自分の可能性を模索したいと考えている人に対して、5,000ドル(約60万円)の支援金を提供するというものだ。
同キャンペーンは、NAMI(National Alliance on Mental Illness)が推進するメンタルヘルス強化月間に合わせて、2022年5月4日から20日にかけて実施された。ソウルブーストは、公式ホームページ上で「かつて熱中していた活動や場所に対して、再び戻りたいと思う理由」を募集し、その後クリエイティビティを基準に応募者の中から5人を選出して支援金をプレゼントした。アメリカの企業には退職金という制度が存在しないこともあり、今回のような支援金が、次のステップを踏み出す後押しとして大きな効果を発揮することが期待されている。
ソウルブーストのシニアディレクターであるジェニー・ダンジ氏は、「飲み物を超えて人々の生活にインパクトを与えるようなことを提供したかった。いま、多くの人々が自分の時間をどのように使えばいいのか見直してはじめている。今回のキャンペーンは、新しいチャレンジへの準備ができている人々をサポートして、私たちを幸せにするものが何なのかを考える良いきっかけになったのではないかと考えている」とGLOSSYに対して語った。
終身雇用が一般的だった日本でも、今は転職することは一般的になった。2021年に転職した20代~50代の男女1,500名を対象に、転職者の傾向や変化を調査した「転職動向調査2022年版」によると、2021年の正社員の転職率は前年比増となっており、過去6年間で最も高い数値となっている。また、総務省が発表した2021年の労働力調査では、転職等希望者の総数は889万人と、この5年で1割ほど増えていることが分かった。
ペプシコのキャンペーンのように、今すぐまとまった支援金をもらえるとしたら、私たちは今の仕事を辞めるのだろうか?また、辞めるとしたら次は何を始めるのだろうか?まずは一度立ち止まって、そうしたことを考える時間を設けるのが大切なのかもしれない。
【参照サイト】Employee Resignations Campaigns
【参照サイト】Beauty and wellness brands tap into Great Resignation conversation
【参照サイト】「大退職」は「大改造」でもある…Z世代とミレニアル世代の多くが働き方を再考
【参照サイト】転職動向調査 2022年版(2021年実績)
【参照サイト】労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果
Edited by Tomoko Ito