徒歩圏内で何でも揃う。米アリゾナの歩いて豊かに暮らせる住宅地

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皆さんは、ウォーカブルシティ(Walkable City)をご存じだろうか。ウォーカブルシティとは、自動車を使用せずに歩いて移動できる「歩きやすい(歩いて行ける)街」のことである。街をウォーカブルにすることは、健康や環境、経済活性化やより良い地域コミュニティのために必要不可欠だとされている(※1)。2020年、ロンドンとパリ、コロンビアのボゴタと香港が世界のウォーカブルな街に選ばれた。

そして2021年、米アリゾナ州テンピ市に米国初のプロジェクトとなる、自動車乗り入れ禁止の賃貸アパートコミュニティ「Culdesac Tempe」が誕生する。テンピ市はアリゾナ州の州都フェニックス市の東17kmに位置し、人口は約19万4,000人(※2)、市内にアリゾナ州立大学最大のキャンパスがあることから、学生が多く住む活気ある街だ。

Culdesac Tempeには1,000人が居住でき、住民は道路の代わりに広い並木道を通って移動する。敷地の55%はオープンスペースで、緑豊かな庭や広場、公園が広がっているほか、スーパーやレストラン、カフェや共同ラウンジエリア、およびコワーキングスペースは家から歩いて5分以内で行くことが可能。車がなくても豊かな生活を満喫できる空間になっている。

自家用車と自家用車用の駐車場はCuldesac Tempeには存在しないが、エコでスマートな交通インフラが整っている。十分な容量を持つ駐輪場と公共交通機関である路面電車のようなライトレールが敷地内にあり、専用の駐輪場と充電設備を備える電動自転車やスクーターのシェアリングと、1時間ごとにレンタルできるカーシェアリングを装備。専用のライドシェアピックアップゾーンも敷地周辺に点在する。

現在、アパートの賃貸予約を受け付けており、寝室1~3部屋で広さ54~111平方メートルの異なるタイプのアパートが用意されている。Culdesac Tempeの開発は、自動車を使用しないことをコンセプトに掲げる、米国初の不動産開発業者Culdesacが行った。Culdesac Tempeは同社の初めての住宅地開発事業であり、次に開発する住宅地は、5,000~10,000人が居住でき、学校や医療施設といった施設も敷地内に設置することを計画している。同社が目指すのは、より持続可能で幸せな都市。これまでの自動車中心の都市に代わる、新たな可能性を示していきたいとしている。

国民の2,5人に1人が乗用車を保有する米国(※3,4)の、自動車乗り入れ禁止住宅地。私たちの生活と街に本当に必要なものは何か、どういう街に住みたいか、生活と都市のあり方を考えさせてくれるCuldesac Tempeのような街が、今後増えていくかもしれない。

※1 Pedestrians First
※2 Tempe, Arizona Population 2020(Tempe, Arizona Population 2020 (Demographics, Maps, Graphs)
※3 世界各国の四輪車保有台数(2018年末現在)、一般社団法人日本自動車工業会(JAMA – 世界生産・販売・保有・普及率・輸出)より
※4 外務省より

【参照サイト】Culdesac(Culdesac | Experience Someplace Better)
【参照サイト】Institute for Transportation and Development Policy(ITDP)
【参照サイト】Tempe, Arizona Population 2020(Tempe, Arizona Population 2020 (Demographics, Maps, Graphs)
【参照サイト】世界各国の四輪車保有台数(2018年末現在)(JAMA – 世界生産・販売・保有・普及率・輸出)
【参照サイト】アメリカ合衆国(アメリカ合衆国基礎データ|外務省)
【関連記事】ウォーカブルシティとは・意味

Edited by Tomoko Ito

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