未来世代をステークホルダーに。「シェア」に学ぶ、短期的思考卒業のヒント【イベントレポ】

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2022年11月1日、一般社団法人シェアリングエコノミー協会が主催する「SHARE SUMMIT 2022」が会場とオンラインのハイブリッドで開催された。

シェアサミットは、行政や企業、アクティビストなどあらゆる分野からスピーカーが集まり、シェアをキーワードに持続可能な社会に向けて多様な切り口から議論を行うカンファレンスで、2016年から毎年開催されている。

2022年のテーマは、「次世代へシェアすること~先送りしない持続可能な共生社会を~」。

本記事では、セッション「次世代へシェアする共生社会の設計図〜セクターを超えて持続可能な社会を作る〜」より、印象的だった部分を抜粋してレポートする。

スピーカー

岸本 聡子(きしもと・さとこ)
東京都杉並区長

田口 一成(たぐち・かずなり)
株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長

酒井 功雄(さかい・いさお)
気候変動アクティビスト

青井 浩(あおい・ひろし)
株式会社丸井グループ 代表取締役社長 代表執行役員 CEO

モデレーター

上田 祐司(うえだ・ゆうじ)
株式会社ガイアックス 代表執行役社長

若者の声が当たり前に聞かれる社会へ

気候変動や格差、貧困……。さまざまな社内問題が山積する今、必要とされていることのひとつが「将来世代の声をいかに聞いて政治やビジネスに反映していくか」ということだ。

COP26にも参加経験のあるZ世代で気候変動アクティビストの酒井氏は、日本の将来世代として現在感じていることをこう語る。

「日本では社会的な運動が冷笑される風潮が強いと感じていて、そこは海外とも温度差を感じます。また、限られたビジョンしか示されていない中で、限られた人たちが未来を作っている状況があると感じています」

酒井功雄氏

気候変動アクティビスト 酒井 功雄さん

これに対し丸井グループ代表取締役社長の青井氏は、「世界ではミレニアル〜Z世代が労働人口のマジョリティになっているが、日本ではその世代はまだ人口的にマイノリティ。将来世代の声が届かない社会や政治になっていることは特殊な状況だと考えていて、それを乗り越える働きかけをしていかないと危険だと思う」と話す。

2021年、丸井グループは、「株主・投資家」「顧客」「取引先」「社員」「地域・社会」といった従来の5つのステークホルダーに「将来世代」加えた「6ステークホルダー・ガバナンス(※)」をスタート。その理由について、同氏はこう語る。

丸井グループの「6ステークホルダー・ガバナンス」

「将来世代をステークホルダーに入れることによって、『経営の時間軸』は長くなります。現代では、経営のショートターミズムが加速してきたことによって、気候変動をはじめとしたさまざまな課題が生まれていると言えます。この時間軸を伸ばしていくことが重要だと考えています。

アメリカの先住民の中には、9世代先のことを考えて投資をするといったことをずっと続けている人々もいます。それに対し、なぜ我々はこんなにも短い時間軸で考えてばかりなのでしょうか。こういったことを一度メタ認知して、この状況が異常であることを認識すべきだと考えています」

青井 浩氏

株式会社丸井グループ 代表取締役社長 代表執行役員 CEO 青井 浩さん

ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長の田口氏は「同じように感じる」と続けた。

「一言でいうと、今のビジネスの在り方は、数字ばかりを追いかける“せせこましい”ものだと感じています。ただこれは、人間が劣化してしまったのではなく、資本主義のシステムそのものに問題があると捉えています。

資本主義は効率の追及でできているため、それがどんどん分断を生み出していき、みんなが悪気なく良かれと思ってやってきたことがさまざまな問題を引き起こしています」

同氏は、「効率の追求によって見えなくなってしまっているものを『見える化』していくことが重要であり、そのためにはもう少し『小さい経済』のなかで生きていくことを取り戻しても良い」との考えも語った。

田口 一成氏

株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長 田口 一成さん

共生社会で必要となるのは、「同じゴールをも持つ連帯」

そんな将来世代も含め、あらゆる業界やセクターの人々が協働して課題を解決していく「共生社会」は、これから私たちが目指すべき社会像のひとつと言える。では、実際に共生社会を作っていくために、私たちはどのような考えを持っておくべきなのだろうか。

1997年に京都で開催されたCOP3の頃から環境問題に取り組んできた岸本氏は、気候変動に対処するためには、市民がより政治に参加していける社会が必要だと述べた。

「資本主義のもたらした気候変動と格差。この2つを考えずに、政治もビジネスも出発することはできないと考えています。私は杉並区長として、市民と政治の距離を近づけたいと思っており、その最も大きなトピックが気候変動だと思います。

例えば、無作為に市民が抽出されて議論する気候市民会議はそれに当たります。行政が議論すると、どうしても定量的・技術的な解決策に陥りがちなのですが、市民の視点で考えると、これまでの解決策そのものを根本からくつがえしたり、社会の文化そのものを変えていったりするようなアイデアが出てくると思っているからです」

また同氏は、“コモンズ(共有財産)”を街の中にできるだけ増やしていくことが大事であり、行政はさまざまなプレイヤーのファシリテーター的な役割を果たしていけるとの考え方を示した。

岸本 聡子氏

東京都杉並区長 岸本 聡子さん

田口氏は共生社会の構築に必要な条件として、「連帯」というキーワードをあげた。

「良い取り組みをしている人はたくさんいますが、孤軍奮闘していてそれぞれの活動が見えてこないのがとてももったいないと思います。共生社会では、『ひとつの同じゴールをもった連帯』がとても大事だと思っています。そして、そこで排他的になってはいけない。いろんな人と組みながら、どう広げていくのかといったコレクティブインパクトを目指し、ついつい自分達だけでやろうとしてしまう姿勢を変えなければいけません」

青井氏は、大人の方から将来世代に歩み寄ることが共生社会への一歩になるとの考えを述べた。

「現役世代、高齢者、若者との間に、思った以上に大きな溝があると感じています。そして、そこを埋めるためのアクションは、大人の側からしていかなければいけない。いかに若者をリスペクトして、若者から学べるか。そこから共生社会が生まれていくと思います」

編集後記

筆者がシェアと聞いて最初にイメージするのは、モノや食べ物といっために物質的な意味での「シェア」であった。しかし、本セッションでは、知識や情報、想いといった、「目に見えない価値のシェア」に焦点が当たっていたことが印象的だった。

これまでは、情報は周りと差をつけるためにできるだけ独占しようとする時代だったように思う。しかし、気候変動のように到底個人や一企業では解決できない大きな問題を前にしたときに必要となるのは、あらゆる人々との協力である。そして、そのために必要となってくるのが、情報や意見、想いなどを惜しみなくシェアする、いわば「シェアの心」なのだと、本セッションを聞いて強く感じた。

【参照サイト】SHARE SUMMIT 2022公式ページ

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