「測る」から始まる、環境価値創造。大崎電気×ESPの挑戦【Be Climate Creative!】

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自然環境の危機から生物多様性の危機、食料の危機、安全保障の危機、人権の危機まで……さまざまな危機をもたらしている気候変動。この問題に立ち向かうためには、人々をワクワクさせる創造的なアイデアや、人々に新しい視点を提供する創造的な表現とコミュニケーション、デジタル技術を活用した創造的なビジネスモデルの創出といった一人ひとりのクリエイティビティ(創造性)が必要なのではないだろうか。

そうした想いから、IDEAS FOR GOODは株式会社メンバーズとのシリーズ「Climate Creative」をお届けしている。今回は、脱炭素に取り組む、大崎電気工業株式会社の小野氏と鈴木氏、そしてエネルギーアンドシステムプランニング株式会社の安孫子氏に話を伺った。

※以下は、株式会社メンバーズ萩谷氏・中村氏による小野氏・鈴木氏・安孫子氏へのインタビュー。

話者プロフィール
小野 信之さん

小野信之(おの・のぶゆき)
大崎電気工業㈱ 執行役員 営業本部副本部長 兼共創デザイン推進室長。東京電力に入社後、企画部門、事業開発部門にて新会社設立や新たなサービス開発、M&A、ベンチャー企業への投資等の業務に従事。その後、新たなサービスを自ら立ち上げ、ビジネスモデル立案、事業計画策定、営業推進まで全てを手掛ける。「地球の未来を創造し続けるエネルギーデザイン企業」をミッションに掲げ価値創造に取り組む。

鈴木達也さん

鈴木達也(すずき・たつや)
大崎電気工業㈱ 営業本部 共創デザイン推進室 GXソリューション部長。入社以来、営業本部に所属し、機器・システムやエネマネサービス販売などの法人営業を経験。脱炭素社会への貢献を目指し、お客様と自社に向けて社内外の活動支援に取り組む。

安孫子 崇弘さん

安孫子崇弘(あびこ・たかひろ)
エネルギーアンドシステムプランニング株式会社(ESP) 代表取締役。東京電力に入社はしたが、在籍期間のほとんどを新規事業会社へ出向。新規事業会社では営業から省エネ技術、サービス開発、システム開発、業務効率化まで幅広く実務を経験。2013年に東電を退職し現ESP社を設立。これまでの経験を活かして、エネルギーとデジタルの融合領域を得意分野とし日本各地の企業・工場にコンサルを行っている。

脱炭素社会時代の到来により事業が進化

Q. はじめに、大崎電気の成り立ちや事業内容を教えてください

小野氏:大崎電気は、もともと電力量計の事業を主とした100年企業です。これまで電力量計は、電力を測って電気代を請求する際に使われることが主軸でしたが、脱炭素という新たな価値・社会的なミッションが生まれたことにより、脱炭素社会の実現に向けた事業展開を開始しました。今年度の4月には、GXソリューション部を立ち上げ、さまざまな企業のGX化を進めています。

Q. エネルギーアンドシステムプランニング株式会社(ESP)についても教えてください

安孫子氏:弊社はエネルギーアンドシステムプラニング株式会社という名前の通り、省エネとシステムのコンサルティングを中心とした事業展開をしており、今年で10年目となります。脱炭素化が進む中で、社会的な役割を見出しつつあると感じています。

Q. 脱炭素への貢献は、立ち上げ当初から構想されていたのですか?

安孫子氏:そうですね。はじめは省エネルギーの事業を行っていましたが、3年ほど前に菅総理がカーボンニュートラル宣言をしたことを受け、これは間違いなく脱炭素が“ブーム”ではなく“当たり前”の世の中がくると確信しました。お客様のより大きくなる期待に応えていくためには、脱炭素化の支援をしていかなければならないと考え、脱炭素事業を2年前に立ち上げました。

変化する“エネルギーの有効化”と新たな“CO2削減”という価値基準

Q. 大崎電気が脱炭素に舵を切るきっかけはありましたか?

小野氏:大崎電気は、もともと「エネルギーの有効活用」を会社のビジョンに掲げていました。エネルギーを有効に活用するということは、脱炭素にも関係しているのです。つまり、「エネルギーの有効活用」という文脈の中で、CO2の排出量を減らすという取り組みを長年行ってきていたということです。そのため、新しく脱炭素の取り組みを始めたということではなく、今までの延長にある事業という認識です。

鈴木氏:ただし、「エネルギーの有効活用」が変化しているのも確かです。これまでの「エネルギーの有効活用」は、電気代つまりエネルギーコストのコントロールでした。しかし、CO2の排出量を減らしたいという新たなニーズが発生したことで、これまでの、エネルギーの有効活用=エネルギーコスト、という尺度から、エネルギーの有効活用=CO2排出量の削減、へと価値が変わってきています。お客さまのエネルギーコストを削減しながらCO2を削減するという新しい価値基準が加わったといえるでしょう。

安孫子氏:これまで、省エネは経済合理性を求めるために行われていました。企業にとっては、省エネは省コストつまり即利益につながるため、ここに強烈なメリットがあったのです。しかし、近年はもう一つの価値基準として「CO2排出量」が出現しました。ヨーロッパに拠点を持つグローバル企業は、日本に拠点があったとしても、コストよりCO2削減だと捉え、早くから取り組みを進めています。外資系の企業も同様です。

Q. 脱炭素を取り巻く状況が世界でも大きく変化しているのですね。

安孫子氏:そうですね。かつては、CO2削減に取り組むメリットが明確でないという意見もありましたが、パリ協定でCO2排出削減が国際公約となったことで、関連法規も整備され、GHGプロトコルというCO2の計算方法における共通の物差しも出現しました。
GHGプロトコルが世界で取り決められたことによって、そのルールに基づく算定結果で各国の取り組みが評価されるようになり、徐々に、各企業が無関係と言えなくなってきました。世界の脱炭素が進む仕組みに組み込まれてきたというのが、日本の現状でしょう。

Q. 外堀が埋まりはじめ、進めざるをえないということですね。多くの企業もそういった状況でしょうか?

鈴木氏:様々ではありますが、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)なども含め、市場からのプレッシャーを感じる企業は増えているように思います。特にサプライチェーンに関する相談が多くなっています。取り急ぎ組織は作ったものの、何をしていいかわからない。そういった状況の企業が多いのではないでしょうか。

安孫子氏:欧米では「人に優しくしましょう」などと同じように、「気候変動に向き合おう」というの流れが大きくなっています。例えば、Appleは日本国内のサプライヤーに対しても再エネの利用を求めていますし、それができないサプライヤーには導入に向けた支援を表明しています。Appleは気候変動に本気で向き合っているのだと、かなり衝撃を受けました。

話者の3名

小野氏:CO2に価格がつき始めたことが一つのフックとなり、脱炭素化への動きに組み込まれつつある日本ですが、日本国内の企業は、仕方なく対応するという考えから早く抜け出す必要があります。そうでなければ、国際ルールにおいて日本が環境後進国として扱われてしまうからです。そうなってしまったら外交問題、エネルギー問題、政治、エネルギーセキュリティや国家の安全保障など、あらゆる面で不利になる可能性があります。脱炭素への対応は、そうした国際的な外交の切り札になる力を持っているのです。

仮に、今後日本がCO2を大量に排出するようなことがあれば、日本の製品は輸出する際に課税されることになるでしょう。CO2を出さないように作られた商品と、CO2を大量に出して作られた安価な商品が同じ価格レベルにならないよう、課税されるということです。

安孫子氏:価格も性能とよく言われますが、CO2排出量も性能の一つになります。近い将来、コンビニの全商品に値段がついているように、CO2排出量の記載がない商品もなくなるのではないかと想像しています。このような世界を想像し、日本の経営者もマインドを変えることが重要です。

小野氏:5~10年後には、業界も変化し、それまでは競合と思っていなかった会社が競合になるかもしれません。それと同様に、CO2排出量を削減しないことも十分経営リスクになり得るのです。

両社が連携する脱炭素ソリューション

Q. 現在両社で連携し提供するソリューションを教えてください。

小野氏:脱炭素に向けたソリューションでは、基本的に測る・知る、減らす、変える、という大きく3つのフェーズに分かれます。多くの企業は、そもそも何を計測すればいいかがわからない状態です。そのため、まずは自分たちのCO2排出量を「知る」ところから始まります。そして、計測した数値を他の企業・部門と比較し、現状を把握します。ここまでが、最初の「測る・知る」フェーズです。つまり、エネルギーの可視化です。

次に、どうしたらその数値が減るか、ということを考えます。果たして、それは薬で治るのか、薬は必要なのか、必要ならどの薬なのか、はたまた手術がいるのか、という対応を考えそれを実行します。ここが「減らす」フェーズです。実際は、ここではエネルギー量をコントロールするだけでなく、多くの場合は、現場の業務改善までを同時に行います。そして、最後にDXが求められる「変える」フェーズです。ここが、まさにコンサルティングの領域となります。取得したデータを単に脱炭素だけに使うのではなくて、見えない価値の可視化につなげるようなケースもあります。

大崎電気が提供するサービスの概要

大崎電気では、各フェーズで様々な製品やサービスを持っていますので、コンサルティングをしながら、お客さまに合わせて提供しています。

Q. エネルギーの転換ということでは、再エネをすればいいという考え方もありますよね?

鈴木氏:はい。日本のCO2排出量の90%以上がエネルギー由来のため、エネルギーの種類を把握すれば、基本的にはCO2排出量のコントロールが可能です。

そうしたことでは、日本において、エネルギーの転換はカーボンニュートラルを目指す上で有効であり、エネルギーの転換なしには達成は難しいと言えます。調達する上で、CO2フリー電力を購入することが挙げられますが、日本では再エネ電源は20%しかありません。だからこそ、省エネでエネルギーの使用量を減らしながら、非化石燃料のエネルギーの量を増やす、両方を進めていくことがとても重要です。

Q. 脱炭素は、もはや世界共通のアジェンダの1つになっていると言えますか?

安孫子氏:そうですね。取り組まないといけないのは、間違いありません。脱炭素化戦争とでもいいましょうか、そうしたフェーズになっていると感じます。ここで勝つためには、国としてもきちんと日本での取り組みを進め、同時に世界に向けて我々の取り組みを発信して欲しいと思います。日本の脱炭素への取り組みの発信が不十分であると、諸外国から事実と異なった認識や指摘を受け日本の国際的なプレゼンスも弱まってしまいます。

小野氏:日本ではまだまだ経営者の意識に差があります。とはいえ、この脱炭素の流れにおいて、現在は燃料費も高騰しています。こうした状況であれば、エネルギー使用量を削減してCO2排出量も減らそうと、脱炭素に向けてアクセルを踏む会社は増えるでしょう。

モノからコトへと変化する提供価値

Q. 脱炭素を実現する上でDXの可能性はいかがでしょうか。

小野氏:脱炭素に向けて新たな業務をするためには、その業務はアドオンとなるため、現状の業務の作業量を減らさなければなりません。そういう時に、システムや業務のDXが必ず求められます。また、CO2排出量を減らそうとする際に、現場オペレーションの改善も合わせて行う必要があり、そうした際にもDXが必要となります。

鈴木氏:脱炭素を進めることは、さまざまな要因により難しいと実感しています。しかし、業務のDXでコストダウンできます、と言うと進めやすい。そうした側面からもDXは重要です。

Q. 提供するサービスや商品にも変化が求められます。

小野氏:大崎電気は老舗計測メーカーとして100年の歴史がありますが、それがこのままこの先100年も続くかというと、そういうわけではありません。我々にも時代に合わせた変化が求められます。脱炭素社会を目指す中、電力量を測ることが環境価値を測ることと同義になりました。すると、企業がこれまで減らしたCO2排出量を測ることで、新たな価値を見える化することができます。つまり、お客さまはメーターが欲しいのではなく、メーターで計測した後の環境価値を測るツールとして、たまたまメーターを使っているだけだ、という考えに価値提供を変化できたのです。

Q. まさに、モノからコトへの変化ですね。メーターにより新しい価値をどう創造できるか、ということですね。

安孫子氏:そうですね。測るものは電気だけではありません。電気を通じて「何を測るのか」が重要です。例えば、それは人の幸せかもしれないし、未来かもしれません。

鈴木氏:これまでは、メーターは過去のある時点におけるスナップショットしか刻むことができませんでした。しかし、DX、さらにはGXと組み合わせることによって、未来の断面を過去のデータから予測することが可能になります。それがもたらす価値を可視化することが、大崎電気の次の100年につながると考えています。

求められる“カーボンリテラシー”

Q. 企業がカーボンニュートラルを目指す上で必要なことは何でしょうか。

安孫子氏:リテラシーは非常に重要です。「カーボンリテラシー」を持ち合わせる人が少ないからみんな困っているわけであって、これが当たり前になったときに、社会が変わるのだと思います。かつて、デジタルの時代にデジタルデバイドがあったように、今は「カーボンデバイド」として起きていると感じています。

今では、小学校でもSDGsについて学びますし、中学校の入試問題でも太陽光パネルの角度と太陽光に関する問題が出題される時代です。そうした子どもたちが将来どのような企業を選ぶのかを考えると、企業として環境問題に取り組むことは、優秀な人材を集めるうえでも必要になります。そのためには、長期的な視点で取り組むこと、そしてリテラシーを高めることは必須です。若い人たちの未来を作るのだと思って取り組むことが、良い社会の実現につながると考えています。

Q. 企業だけでなく、生活者としてのリテラシーも高めるためには何が必要でしょうか?

安孫子氏:重要な役割の一つにメディアが挙げられます。例えば、ヒートポンプ技術は日本が世界に誇るべき技術であり、これが世界中に導入されれば、日本国内で減らすより遥かに多くのエネルギーを削減できる可能性があります。もっと世界にアピールすることが重要です。

小野氏:プラスチックゴミなどの問題でいえば、レジ袋が有料になり、身近な問題となりました。生活者が考える機会は確実に増えています。あらゆる企業が、地球に対して意識を変えていけば、ユーザーの意識も確実に変化するでしょう。環境に配慮していない企業の商品は買わない、という行動変容が消費者に起きることが、社会を大きく変えることになるかもしれません。そうなると企業も変わらざるをえません。

Q. 最後に、将来の脱炭素社会に向けたメッセージをお願いします。

小野氏:大崎電気は、創業100年以上の会社です。これまでの100年はエネルギーの計測を事業の主軸としてきました。しかし、これからの100年は、未来の社会に向けて脱炭素を中心に、エネルギーの有効利用や業務のDX化を通じて、社会に貢献したいと考えています。

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