新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに、リモートワークという働き方もだいぶ普及してきた。場所や時間に縛られにくい職場環境となった一方で、家に小さな子どもがいる中で集中して仕事をすることの大変さが浮き彫りになっている。
そんな中、アメリカ合衆国南東部、バージニア州リッチモンド近くのフェアフィールド地域公共図書館は、小さな子どもの親が、子どもを連れて働けるスペース「ワーク・アンド・プレイステーション」を提供している。
これは、親のスペースと子どものスペースがしっかりと区切られているが、子どものスペースには子どもの注意を引く遊びや仕掛けが施されている。そのため、子どもが遊んでいる間に親は子どもを見守りながらも仕事することができる。周りに他の親たちもいるので、何か困ったときには助け合えそうだ。
考案したのは、フェアフィールド地域図書館を含む、ヘンリコ郡公共図書館の館長であり、郡内のすべての図書館を監督するバーバラ・ウィードマン氏だ。
ウィードマン氏自身、シングルマザーとして子どもを育てた経験があり、小さな子どもを連れ、図書館でリモートワークをする親たちが苦労しているのをよく目にしていた。なにより、パソコンを使用しながら子どもを見守ることがいかに大変か、実感していた一人でもあった。
2017年、ヘンリコ郡公共図書館が改築する計画となったとき、ウィードマン氏はリモートワークする親と子どもが一緒に滞在できる場のアイデアを、クイン・エヴァンスの建築デザイナー、シャノン・レイ氏と協力し、フェアフィールド地域図書館のリニューアルオープンと共に、「ワーク・アンド・プレイステーション」のアイデアを実現させた。図書館がオープンすると、その場の情報はすぐに拡散された。
幼稚園教諭で母親のティキア・ウッドソン氏は「小さな子どもはなかなか目を離せないため、子どもを見守りながら仕事することは家庭では難しい。しかし、ここでは顔を横に向け、子どもの様子を見守りながらメールに返信したり、仕事に集中できる。子どもにとっても親にとっても、安心安全な場があることで、以前よりもゆとりができた」
とCBSニュースに語っている。
フェアフィールド地域公共図書館のあるエリアは、子どもからお年寄りまで多世代が暮らす、黒人系の人々が多い地域でもある。子どものいる親が知りたい情報にアクセスできることはもちろんのこと、自宅にインターネットがない人にとっても、コンピューターにアクセスできる公共図書館のような環境は重要だろう。
今回のワーク・アンド・プレイステーションの設置は、「どんな状況にある人も、図書館に足を運ぶことを歓迎されている」そんなメッセージにもなるのではないだろうか。
新たに図書館の存在意義を再発見する機会にもなった今回のニュース。今後、図書館がどう変容していくのか、楽しみである。
【参照サイト】How one Virginia library is helping moms who work from home(CBSニュース)
【参照サイト】A library went viral for having baby cribs attached to its desks. The single mom behind it says she wanted the library to serve entire families.(INSIDER)
【参照サイト】This library offers a special ‘Work and Play station’ to support parents working from home
アイキャッチクレジット:Chris Cunningham Photography, courtesy TMC Furniture
Edited by Erika Tomiyama