「ジャガイモの茎」で服づくり。ポテトをこよなく愛す英国生まれの新繊維

2023.11.08

Souma Motomi

マッシュポテト、ベイクドポテト、ボイルドポテト。

筆者がアイルランドで働いているビュッフェ形式のレストランでは、この3つのうち2つが毎日必ず用意される。訪れるお客さんは、お肉かお魚といったメインメニューを決めたら、これまた必ずと言っていいほど、「ポテト(じゃがいも)をお皿にのせて」と頼む。みんな本当にじゃがいもが好きなんだなあ、とつくづく思いながら、また次の人のお皿にじゃがいもをのせる。そう、じゃがいもは食事に必要不可欠の”レギュラーメンバー”なのだ。

しかし、このじゃがいもを収穫した後に残る「茎」の部分が、大量の廃棄物となって燃やされていることを知っているだろうか。

そこでアイルランドと同じくじゃがいもが国民食であるイギリスのスタートアップ企業fibeが、じゃがいもの茎から作る繊維を開発した。

この繊維の名前は「Patacel」。同社は、じゃがいもの茎から有害な化学物質を使わずに繊維を抽出することに成功した。これは、環境負荷の少ない素材として近年注目を集めている麻やジュートといった素材と比べても大きな利点だという。手触りも前述の2つと比べるとはるかに柔らかく、コットンに近い性質を持つ。

また、生産プロセスにおける環境負荷をコットンと比較してみると、水の使用を99.7パーセント、CO2排出量を82パーセント削減できるという。廃棄物を利用しているので、生産のために新たに土地を使用する必要がないのも大事なポイントだ。

 

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何より、同社が拠点を置くイギリスはもちろん、じゃがいもは世界中で大量に生産、消費されている。この避けられない廃棄物を洋服の素材として利用できれば、そのインパクトは非常に大きなものとなるだろう。

fibeは、現段階ではPatacelの商用化には大きな投資が必要だとしているものの、環境負荷が少ないうえに、価格を抑えつつ大量に生産できるという特徴を持つこの繊維は、今後アパレル業界にとって魅力的な選択肢になるのではないだろうか。じゃがいもの持つソラニンのおかげで抗菌性もあり、使い終わった後はリサイクルやコンポストができるのも良い。

イギリスやアイルランドでは、毎日じゃがいもを食べながら、その茎を洋服としても身にまとう日がいち早く訪れるのかもしれない。じゃがいもをこよなく愛する人々だから、きっと喜んでこのアイデアも受け入れてくれるのではないか、と思う。

【参照サイト】TEXTILE FIBRES MADE OUT OF POTATO WASTE
【参照サイト】fibe

この記事を書いたライター

相馬 素美

Souma Motomi

相馬素美(そうま・もとみ)1996年横浜出身。東京音楽大学器楽専攻鍵盤楽器(ピアノ科)、同大学院伴奏研究領域にて研鑽を積む。2020年にハーチ株式会社に入社、IDEAS FOR GOOD、Circular Yokohama等にてサステナビリティに関する幅広いトピックの取材・執筆のほか、企業向けのサステナビリティ研修、展示、地域イベント、ワークショップ等の企画運営を担当。2023年、半年間アイルランドに滞在し、語学研鑽や取材活動を行う。(この人が書いた記事の一覧