中米の小さな町が「空から降る魚」で生計を立てるまで

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中米ホンジュラスにある小さな町ヨロでは、春から夏にかけて「魚の雨」が降る。今回は、そんな空から降ってきた魚が、地域経済を支えるブランド魚になった取り組みについて紹介しよう。

そもそも、なぜ空から魚が降ってくるのか。この不思議な現象は「ファフロツキーズ(fafrotskies)」と呼ばれ、科学者たちによると天候によって発生したサイクロンが海から魚を吸い上げ、乾いた土地に魚の雨を降らせるのだと考えられている。魚の他にも、カエルが降ってきたりと、通常では考えられないものが空から降り注ぐことをこう呼ぶのだ。

以前から世界各地で注目されていた異常気象だったが、ヨロの住民たちは、そうして魚に恵まれる時期を「奇跡」と呼ぶだけだった。そんな彼らの平均的な給料は、1日1米国ドル(150円相当)ほどと少ない。

そこで何かできないかと動いたのが、世界で数々の広告を手掛けてきたオグルヴィ社である。同社は、中米地域で持続可能な漁業に取り組むリーガルスプリングス社と協働し、この奇跡を商品に変えた。そしてできたのが、「ヘブンフィッシュ(Heaven Fish:天の魚)」ブランドだ。

Haeven Fish

魚の雨が降ったあとは、地元の事業者がその魚を集めて新鮮なうちに冷凍。リーガルスプリングス社がブランド魚として認定した「Haeven Fish」として、ホンジュラス全土に発送していく。

ブランドの設立を受けて、国内の90を超えるレストランがこの魚を購入。そして現在は、80を超える食料品店が取り扱っている。オグルヴィ社が制作したプロモーション動画によると、住民たちの給料も400倍まで増えたという。地域の人々を助ける正真正銘のブランドとなったのだ。

未だ解明されていないことも多い、空から魚が降ってくる現象が、いつまで続くかはわからない。もしかしたら、来年はこんな奇跡は起こらないかもしれない。そんな脆弱性はありつつも、地元の人々が使おうとも考えていなかったリソースを上手にブランディングし、人々の目に届くようにし、結果的に一つの社会を助けた事例としては非常にユニークだと言える。

【参照サイト】Heaven Fish
【参照サイト】Heaven Fish Regal Springs

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