パリのトタン屋根を、緑の庭園に変身させるスタートアップ「Roofscapes」

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2024年のパリオリンピックに向けて、シャンゼリゼ通りや、エッフェル塔周辺を含む、街全体の緑化を進めるパリ市。しかし、パリの公共緑地の割合はいまだ9.5%で、これはロンドンの33%やローマの34.8%と比較しても低く、公園などの緑地面積は不足しているという(※)

「都市の緑地の開発と拡大」は、都市のヒートアイランド現象の緩和や、市民の健康や生態系のバランスを保つために欠かせない要素だ。しかし、パリのような建物が密集した都市では、新しい緑地を作るための地上の空きスペースが限られているという問題がある。

このような状況においてパリ市が注目しているのが「屋根」の活用だ。「Roofscapes」というスタートアップが、木製のプラットフォームを屋根の斜面に固定し、屋上庭園やテラス、さらには歩道を作ることを提案している。屋根のさまざまな寸法や、柱と柱の幅に合わせて調整することも可能だ。

屋根緑化

Image via Roofscapes

Roofscapes

Image via Roofscapes

もともと、パリの建物の約70〜80%、およそ11万の物件が亜鉛の屋根であるため、太陽の熱を吸収しやすく建物内の気温が上昇する構造だった。また、屋根が傾斜しているため、その上で何かをすることは難しかったのだ。現に、パリ市には3,200万平方メートルを超える屋根スペースがあるが、そのほとんどが活用されていない。

そんな中でRoofscapesのソリューションによって、都市の景観を維持しながら、屋根の表面温度を下げ、空気の質を改善、そして雨水を保持し、生物多様性のためのスペースを作ることが可能となるのだ。屋根緑化は、気候変動が引き起こす都市のヒートアイランド現象に対応し、「都市のレジリエンス(回復力)」を強化する上で重要な役割を果たす。

それだけでなく、Roofscapesは近隣住民とシェアできる屋外スペースを屋上に設けることで、市民が集える新たな居住空間を創出することも提案している。これにより、コミュニティの質を高めることも期待されている。

パリ市のヒートアイランド現象を表した図

パリ市のヒートアイランド現象を表した図 Image via Roofscapes

Roofscapesは、マサチューセッツ工科大学・建築計画学部の大学院生三人が2020年に設立したスタートアップ企業だ。同大学の建築学部の学生を対象とした起業家育成プログラム「IT DesignXアクセラレーター」をきっかけに立ち上がり、完成時には最優秀賞を受賞。さらに、パリ旧市庁舎の屋上でのプロジェクトに対してパリ市から6,800ユーロ(約1,076万円)の助成金を授与されている。すでにRoofscapesには、屋根緑化を希望・検討する60を超える建物のリストがあり、問い合わせも途絶えないということからも、その注目度がうかがえる。

Roofscapes

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屋根

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実は屋根活用の動きは、パリだけに限らない。スイスのチューリッヒ市では、1991年以来、新しい建物のすべての屋根に屋根緑化プログラムを義務付けている。また、オーストリアのリンツ市は、世界で最も密度の高い屋根緑化地域であり、1984年から屋根緑化が進んでいる。

パリでも、この動きは進むのだろうか。LinkedInなどSNSでは、「歴史的建造物とこうした新しいアイデアを組み合わせるには、構造的な課題はないのか?」という市民からの意見も見られる。建築環境を気候変動に適応させ、同時に建築遺産を保護するという二つの要素を調和させることには高いハードルが伴うだろう。”地球沸騰”とも表現される現代において、都市は今後、どのように最適解を生み出し、変わっていくのだろうか。

The Global Cities With the Most — And the Least — Public Green Space
【参照サイト】Roofscapes
【参照サイト】Paris Rooftop Days
【参照サイト】From grey to green: the plan to turn Paris’s zinc rooftops into gardens
【関連記事】2024年パリ五輪に向けてエッフェル塔周辺が緑豊かに再設計。持続可能な開催の象徴へ
【関連記事】道の主役を車から人へ。パリ・シャンゼリゼ通りが2030年までに緑溢れる庭園に

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