飲み終えたビール瓶が雨量計に。気候変動からコロンビア農家を支える「NATIVA METER」

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気候変動の影響は、世界各地に影響を及ぼしている。南米の国・コロンビアでも深刻な影響が問題視されている。世界銀行によると、洪水やサイクロン、海面上昇など3つ以上の災害による経済的リスクの観点で、コロンビアは世界10位にランクインしている。南米の中でも災害の発生率が高く、人口の86%が2つ以上の災害による危機にさらされているという(※)

特に異常気象によって起こる大雨による農作物への被害は深刻だ。2022年の雨季には大雨の影響で土壌が湿って耕作ができなくなった農地が約500万エーカーにも及んだ。これが、農家の収入の減少につながり、同国の食糧危機のリスクも増大させている。しかし、コロンビアの農家の降水量の測定方法は正確性が低いことが問題視されていた。

そんななか、コロンビアのコルドバ地域の農家が育てるキャッサバからビールを製造する企業「Cerveza Nativa(セルヴェサ・ナティバ)」は、この課題の画期的な解決策を考えついた。それが、自社のビール瓶をリユース・リデザインして「雨量計」にした、「NATIVA METER」だ。

このNATIVA METERには、「降水量を測れるメーター」と「降雨量が農作物にとって利益となるかリスクとなるかを示したガイド」がついている。農家はビールを楽しんだ後、空のビール瓶を畑に置いておくだけで降水量を測ることができる。そしてこれが、農業にとって大切な作付けのタイミングを決める助けになるという。

NATIVA METER

NATIVA METER

NATIVA METERは、クリエイティブエージェンシーのL&C New Yorkやコロンビアの気象学者と共に、地域の歴史的なデータに基づいて作られた。ボトルに加え、農家が雨水を貯めたボトルの写真を提出できるWhatappグループも立ち上げ、集めたデータからコルドバ地域の降水量の平均を計測し、次の雨季の予測に活用していくという。

「これは農家が日常的に消費する製品にテクノロジーを取り入れるシンプルな方法であり、世界が直面する気候変動に備える手助けになります」と、L&C New YorkのCCOであるRolando Cordova(ローランド・コルドバ)氏はAd Ageに語っている。

NATIVA METERは、2023年5月から、コロンビアのコルドバから始まり、その後他の地域にも販売を拡大していく予定だ。

コロンビアに限らず、農業は気温の上昇や異常気象の影響を直接的に受ける産業だ。気候変動の時代に、自社の製品作りを支える生産者と共に課題に取り組んでいくCerveza Nativaの姿勢は、多くの企業が参考にしていくべきではないだろうか。また、大規模な設備投資に頼るのではなく、自社製品のデザインにひと工夫施すというシンプルなアイデアも、私たちにはもっとできることがあるのではないかとクリエイティビティがくすぐられるものである。

※ Climate Change Knowledge Portal (Colombia)

【参照サイト】NATIVA METER: AdAge
【参照サイト】Colombia Climate Change Knowledge Portal
【参照サイト】Nativa turns used beer bottles into rain gauge meters to support Colombian farmers

Edited by Motomi Souma

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