ボトルの中身は半分だけ。”2100年のワイン”が伝える、気候危機の現状

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日々進行する気候変動。この影響を強く受けている産業のひとつが、ワイン産業だ。ワインの原材料となるブドウの栽培には特定の気候条件が必要であり、温暖化による気温の上昇や降水パターンの変化が致命的となる。特にワイン大国のひとつであるオーストラリアでは、気温の上昇に加え火事や洪水、長期的な干ばつといった自然災害などにより、質の低下や栽培種の変更を余儀なくされる状況に陥っている。

しかし、こういった「事実」をどれだけ述べられても、なかなかイメージがつきにくいものだ。

そんなオーストラリアのワイナリーが作ったのが、中身が半分しか入っていないヴィンテージワインだ。

気候危機を伝えるヴィンテージワイン

Image via Ampersand Estates

「Tomorrow’s Vintage」と名付けられたこのシリーズ。一番右のボトルにはワインが半分しか入っていない。よく見てみると、残り2つのボトルも満タンではない。そして、ラベルには通常は原料となったブドウが収穫された過去の年が書いてあるはずの場所に、2040年、2080年、2100年と、未来の年号が書かれている。

これは、2023年時点でのオーストラリアのブドウの収穫地を100%としたとき、それぞれの年に残る収穫地の割合をワインの量で表しているためだ。2040年には86%、2080年には56%、そして2100年には、わずか44%……。このままのペースで気候変動による気温の上昇が進んだ場合、このワインの原材料である黒ブドウShiraz(シラーズ)を収穫できると予想される土地は、これだけ減ってしまうと予想されているのだ。

Image via Ampersand Estates

だが、これはあくまで「私たちが何もしなかった場合」の未来だ。

このワインを製作したワイナリーAmpersand Estateは、このTomorrow’s Vintageで訴えた気候変動の危機感を行動につなげてもらうため、公式サイトから、オーストラリア国民ができる具体的なアクションへの導線を用意している。例えば、オーストラリア国内の土地を所有する人は、環境保全団体Wildlife Land Trustが主体となって行う、土地の環境破壊を防ぐ効力を持つ土地保全協定にサインすることができる。また、同団体が行うオーストラリアの野生動物の保護活動に対して寄付を行うことも可能だ。

Tomorrow’s Vintageの公式サイトには、こんな呼びかけがある。

私たちのアクションに加わってください。
地球のためにできないのであれば、ワインのために。

あなたが愛し、作り続けていきたいものはなんだろうか。もしくは、ワインのように、日々の生活を豊かにしてくれている、大事なものはなんだろうか。それらは、20年後、30年後も、変わらず私たちの世界に、存在するだろうか。地球のため、と考えると実感が湧かないかもしれないが、自分の大事なものを守るためであれば、強いモチベーションがわく。身近なところから、今、アクションを始めたい。

※1 AR6 Synthesis Report Climate Change 2023
※2 State of the climate 2022

【参照サイト】Scalable design wine bottles to warn about climate change
【参照サイト】AMPERSAND ESTATES LAUNCHES ‘TOMORROW’S VINTAGE’ TO ADDRESS EFFECTS OF CLIMATE CHANGE ON THE AUSTRALIAN WINE INDUSTRY
【参照サイト】Tomorrow’s Vintage
【参照サイト】Ampersand Estates
【参照サイト】How is climate change affecting wine?
【参照サイト】The impact of climate change on the global wine industry: Challenges & solutions

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