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“あなたがいま、リペアしたいものは何ですか?”
2023年12月。台湾の首都、台北の路地にある町の修理ステーションを訪れた。そこで「どんなものが修理に持ち込まれますか?」と聞くと、こんな答えが返ってきた。
「電気鍋とか、おもちゃとか、色々ありますよ。直したい理由は、必ずしも高いものだからではないんです。ハンガーとか、市場に買い物に行くときに持って行く荷物入れとか、安くても思い出が詰まったものを持った人がよく来ます」
修理ステーションでボランティアとして働く左適佑さんは、元々は台湾のハイテク産業で働いていた。定年後にたまたま見かけて入ったこの場所に関わるようになり、2023年で10年経つという。仕事を辞めてもこうして社会の役に立つことができるのは、すごく嬉しいことだと話をしてくれた。
とあるきっかけから内部対立が起きていた町の人々の、関係性をつなぎなおすきっかけになったのも、この場所だったのだという。
文章だけでは伝えきれない、手触り感のあるサステナビリティを現地で実際に見て、感じてほしい──社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン・IDEAS FOR GOODが開催する体験プログラム「Experience for Good」。今回は、旅の力を信じるトラベルライフスタイルマガジンLivhubと共に、台湾の政府系デザイン振興機構「台湾デザイン研究院(TDRI)」との共催でお届けする。
2024年最初の旅の舞台は、台湾の首都・台北市(一部、新竹市及び桃園市)。
面積も小さく資源も限られている台湾では、1974年に廃棄物清理法(廃棄物処理法)が制定されて以降、廃棄物削減やリサイクルなどの取り組みが法整備含め推進されてきた。このように基盤が整備されていたこと、また経済や安全保障の観点からも必要性に迫られていることもあり、官民一体となったサーキュラーエコノミーへの移行対応が急速に進められている。(参照:IDEAS FOR GOOD過去取材記事「台湾のサーキュラーデザインの今。台湾デザイン研究院・院長に聞く」)
移行を進めるうえで、重要なソリューションのひとつとして台湾が着目しているのが、人々の創造性が付加価値となる「デザイン」のソフトパワーだ。英国のサーキュラーエコノミー推進機関・エレン・マッカーサー財団も、このデザインを、サーキュラーエコノミーへの移行を目指すうえでの重要な要素の一つと捉えている。
今回の旅では、3泊4日(2024年6月13日(木)〜6月16日(日))のなかで、台湾でサーキュラーデザインとソーシャルデザインを実践する10の企業や団体を訪ねる。旅のテーマは「Repair Our Futures〜つなぎ直す未来〜」。
リペア(修理)とは、壊れたものを直すことを指す。では、今の社会で「壊れている」のは何なのか。
動かなくなった製品だろうか、製品と私たちとの関係性だろうか、それら全てを取り巻くシステムだろうか。
リペアという行為は、壊れる前の状態に対する愛着がない限り決して行われることはない。その意味で、リペアとは過去を否定する行為ではなく、最初からそこにあった良さを取り戻し、場合によってその良さをさらに乗り越えていく行為である。
それでは、直すという行為を通して、私たちは何を「取り戻したい」のだろう。
今回の旅では、「リペア」を一つのキーワードに据えて、台湾のサーキュラー・ソーシャルデザインの実践との出会いや参加者同士の対話を通じ、一人ひとりが自分にとってのリペアの“目的語”を探しにいく旅としたい。
視察先(予定)は以下にて紹介する。
台湾デザイン研究院
2020年に設立された台湾の政府系デザイン振興機構。デザイン主導のイノベーションを通じて台湾の国際競争力を高め、持続可能な社会と産業の発展促進及び、人々のライフスタイルの向上を目指して活動している。具体的にはデザイン人材の育成、企業とデザイナーのマッチング、デザインアワードの運営や公共・産業・社会デザインプロジェクトの推進まで多岐にわたる。デザインをイノベーションの要として重視する台湾のデザインポリシーや、具体的な取り組み内容などを聞き、台湾のデザインのベースを学ぶ。
松山文創園区
日本統治時代にタバコ加工工場として建設された建物を政府主導のもとリノベーションし、文化とクリエイティブの拠点として利用している施設。かつてボイラー室だった場所にはカフェがあり、共同浴場だった場所には図書館がある。施設には歴史を保存するという目的もあるため、過去とは異なる使われ方をしているにも関わらず、目を閉じるとタバコ工場だった頃の姿が想像できるようなデザインがされている。台湾全体から感じる、古いものと新しいもの、ビジネスと文化、イノベーションと保存など異なる二つの要素を上手く共存させたデザインのあり方を体現する施設を歩く。
台電文創・TPCreative
1946年に創業され77年の歴史を誇る、台湾で唯一の公営電力会社「台湾電力」。日本でいう東京電力にあたるような組織の、ユニークな取り組みを二点見にいく。一つ目は、台湾電力内の社内ベンチャー「台電文創 TP Creative」が行う、電気設備の廃棄物のアップサイクル商品だ。変電箱の板を型抜きして作った鍋敷や火力発電所の灰で作ったコースターなど製品は多岐にわたる。二つ目は、彼らのオフィスにある再生エネルギーの発電の原理を伝えることを目的とした施設「ENERGYM(エネルギージム)」。ジム内にあるエアロバイクをこぐと、地底のマグマをかき混ぜる様子がイメージとして映し出され、地熱発電のあり方を体験することができるようになっているなど様々な発電方法を身を持って体感することができる施設だ。
REnato lab
気候変動への課題意識から、温室効果ガス排出量を削減する強力な手段としてサーキュラーエコノミーを捉え、あらゆるセクターにおいて、循環経済の原則に沿ったソリューション開発支援を行う企業。ラボには科学・デザイン・ビジネスの分野横断的な専門家が在籍しており、サーキュラーストラテジーの構築サポートに限らず、CO2排出量の前後比較やリサイクル素材の独自研究開発も行っている。創業者の王家祥氏は、大学院卒業後の初めての仕事として1999年に台湾のリサイクルシステムを考案したという異才である。そんな王氏に台湾のサーキュラーエコノミーやサーキュラーデザインについて伺う予定だ。
春池ガラス
1981年の設立以来40年以上、廃棄ガラスの回収とガラス製品の製作を行ってきた企業。近年は循環経済の実践を経営目標に、台湾全国の6割の使用済みガラスを回収し、その全てを製品化などを通して再利用している。ガラスという比較的循環させやすい素材の魅力を伝えるために、ジャンルの異なる様々な団体と協力して、アート・伝統芸術・観光など様々な形での回収ガラスのデザインを実践・実験。ガラスリサイクルの新たな価値を創造している。今回は彼らのガラス工場を訪れ、春池ガラスの副総経理である呉安庭氏に話を聞く予定だ。
Miniwiz(Trash Kitchen)
ごみの持つ無限の可能性を世界に示すことをミッションに、廃棄物をベースとした高性能耐久建築製品の代替品を開発することで、気候変動の課題に取り組む企業。台湾のみならず、日本のNikeLabやニューヨークのNike本社オフィス、ジャッキー・チェンの上海オフィスなど、世界中でリサイクル建材を用いた構造物のプロジェクトに取り組んでいる。2005年の創業以来、1200以上の独自の建材を開発しているという。今回は彼らが運営する「Trash Kitchen」という施設にて、ごみを3分で製品に変える体験をする。ごみ箱から拾ってきたプラスチックごみが、あっと言う間にモノになる様子は圧巻だ。
古風小白屋
台北の路地にある修理ステーション。台湾には修理文化が根付いていて、市場に行くと服や家電などの修理屋が所々に見られる。しかしこの場所がそれらと異なるのは、お金を介さないということ。自宅で何かが故障した時、週末の朝にこの場所に持っていくと、ボランティアのメンバーが修理の仕方を教えてくれる。我々が視察時に訪れた際に迎えてくれた方は、定年前まではハイテク産業で働いていたという。「すぐに捨てずに使えるものを修理して使い続けるのは地球にも優しいし、修理ができると喜んでもらえて、社会貢献できていると感じられて嬉しい」と話していた。修理を介して住民がつながる場所を訪れ、メンバーから直接話を聞きつつ、場の空気を感じ取りにいく。
O’right
使用後に土に埋めるとコーヒーの木が育つシャンプーボトル、世界初のゼロカーボンシャンプーといった製品から、製造工場やオフィスまで、徹底的に環境にも人にも優しい取り組みを行う、台湾発のヘアケア製品メーカー。安心安全かつ循環型で、環境負荷の低い製品を開発するため、通常であればプロモーションにかける予算の分まで研究開発に当てている。結果、製品が素晴らしいという理由から口コミが広がり、今では台湾の3分の1のヘアサロンがO’rightの製品を導入しているという。また創業者のスティーブン(葛望平)氏はCOPに2年連続で参加する環境活動家でもある。自らチームと共にグリーンランドに赴き、現地で見聞きした気候変動や環境問題の及ぼす影響をまとめた映像を、学校や企業に無償で配布するなどして、地球の危機を訴えている。真っ直ぐに環境問題に取り組む彼らの熱量と取り組みを学びに、オフィスを訪れる予定だ。
5% Design Action
世界各地の様々な分野のデザイナーや専門家を募り、「空き時間の5%を社会課題の解決のために使おう」と呼びかけるプロジェクトを行うソーシャルデザイン・プラットフォーム。教育、健康、環境、経済の4大課題に焦点を当てて、課題に関連する公共セクター、NPO組織、民間セクターとデザイナーや専門家をつなぎ、イノベーションの可能性と解決策を見出すべく活動している。具体的には高齢化することが楽しみになるようなコミュニティセンターや、乳がん検診を受けたくなるようなポップな検診トラックのデザイン、リサイクルセンターのリデザインなどの取り組み例がある。ツアーでは、台湾のソーシャルデザインの今や、5%のデザイン事例などについて話を聞く。
雑學校
教育に関するソーシャル・イノベーションを集め、チェンジメーカーに力を与え、生涯教育の実現を促進することに特化した台湾最大の教育イノベーション・プラットフォーム。「すべての人生が、世界を変える使命を見つけることができますように」「すべての人が、永遠に成長を追求できる大きな学校のような社会でありますように」雑学校の創業者であり校長でもあるオジー(蘇仰志)氏のそうした強い願いのもと運営されている。雑学校の取り組みの一つが、年に一度開催されるアジア最大の教育イノベーション博覧会だ。会場には台湾そして世界のオルタナティブ教育が一堂に会し、老若男女様々な来場者が、混ざり合いながら多様な生き方に触れていく。「Education is life, not like a jail.(教育は人生であり、刑務所ではない)」。人々の人生をよりよくするために、最大級の熱量で社会をデザインし続ける雑学校を訪問する。
※訪問先、内容は一部変更になる可能性がございます。ご了承くださいませ。
台湾企業×日本からの参加者の「交流会」を開催!
滞在3日目の夜には、サーキュラーデザインやソーシャルデザインに取り組む台湾企業と、日本からの参加者の交流会を行う。
会場となるのは、松山文創園区内にある台湾デザイン研究院(TDRI)が管理する施設「Not Just Library」。タバコ工場時代に共同浴場として使われていた施設内には、100冊強にも及ぶ国内外のデザイン雑誌や、グラフィック、工業、建築、服飾、美術など1万冊の蔵書がある。
台湾と日本。未来をよりよくしていくためには、これからどんなデザインが必要なのか。混じり合い、共に探求する場としたい。
※参加企業は追ってお知らせします。
こんな方におすすめ
- 台湾のサーキュラー&ソーシャルデザインの取り組みに興味がある方
- デザイン(特にサーキュラー&ソーシャルデザイン)を生業としている方
- 台湾で熱量高くサーキュラー&ソーシャルデザインに取り組む企業や人々とつながりたい方
- なんだか最近台湾が無性に気になる。台湾に行きたい…!という方
- その他、興味がある方であればどなたでも大歓迎
旅を共にするメンバー
今回の旅を共にする、ハーチ及び台湾デザイン研究院(TDRI)のメンバー紹介する。
加藤 佑(かとう ゆう):ハーチ株式会社 代表
IDEAS FOR GOOD 創刊者。Harch Inc.の創業者。循環経済専門メディア「Circular Economy Hub」、横浜市における地域循環経済プラットフォーム「Circular Yokhama」などに従事。キーワードは「循環思考」。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー
飯塚彩子(いいづか あやこ):ハーチ株式会社 Livhub編集部
旅の力を信じるトラベルライフスタイルマガジンLivhub編集長。慶應義塾大学SFC環境情報学部卒。新卒でインターネット広告代理店にて、アカウントマネジメントとして東京本社とシンガポール支社に合計5年勤務。その後パートナーの転勤に伴いインドネシア・ジャカルタに2年在住した後、出産を機に転職し現職。趣味は本屋滞在と茶。
小島 弘久(こじま ひろひさ):ハーチ株式会社 IDEAS FOR GOOD Business Design Lab
2020年、IDEAS FOR GOOD Business Design Labにジョイン。サステナビリティ・サーキュラーエコノミーに関するリサーチ、サービスデザイン、社内浸透、プロモーションなど、企業・自治体向けの支援を行う傍ら、ファシリテーションやサーキュラーデザインワークショップなど、サステナビリティ推進のためのプログラム開発を担当。
Industry Foresight Section|産業先見チーム:TDRI
TDRIのIndustry Foresight Sectionは、企業や公的機関がデザインと業界横断的なリソースを結びつけ、相互に有益な共創エコシステムを育成するための支援に取り組むチーム。持続可能なデザイン、付加価値の高い素材や製品デザイン等に焦点を当て、ヒューマンセンタードのデザインを核に、デザインの影響力を確立させるべく活動をしている。
サステナブルな宿泊先
今回の滞在では参加者、運営者全員で同じ宿に宿泊する。宿は、台北駅から徒歩10分のところにある「Star Hostel Taipei Main Station」。
使い捨てプラスチックの利用を極力抑え、施設で出る生ごみのコンポストや、雨水の収集と再利用など、大都市台北のなかでサステナビリティに積極的に取り組む宿だ。
Star Hostel Taipei Main Stationのサステナビリティに関する取り組み一覧はこちらから。
旅の概要
実施期間 | 2024年6月13日(木)〜6月16日(日) ※事前懇親会も開催予定(スケジュールは後日お知らせします) |
訪問地 | 台湾・台北 |
ツアー代金 | 11万円(税込) |
ツアー代金に含まれるもの | ツアー期間の宿泊費用3泊分、ツアー参加視察料金、現地通訳・ガイド料金、ツアー2日目と3日目の昼食と1日分の夕食料金、現地運送機関料金(ツアー行程内) |
ツアー代金に含まれないもの | 上記以外。国際線区間航空券、台北松山・台湾桃園空港〜集合・解散場所間(台北市内)の送迎、海外旅行傷害保険、ホテル滞在中の諸費用(クリーニング代、ミニバーや電話代 等)、上記以外の食事代、ご自宅~国内空港間の交通費(往復) |
キャンセル料金 | 旅行契約成立後、お客様の都合で契約解除される際は次の金額を取消料として申し受けます ・旅行開始日の前日から起算して30日前から3日前まで:旅行代金の20% ・旅行開始日の前々日~当日:旅行代金の50% ・旅行開始後または無連絡不参加:旅行代金の100% |
定員 | 12名 |
申込期間 | 2024年4月13日(土)まで |
主催 | IDEAS FOR GOOD、Livhub(ハーチ株式会社) |
共催 | 台湾デザイン研究院 |
旅行取扱 | 株式会社ジャパングレーライン |
プログラムの詳細・お申し込みはこちらから
ツアープログラムに関するご質問は、ぜひお気軽に下記窓口までご連絡ください。
▼プログラム内容に関するお問い合わせ
Livhub編集部のメールアドレス「contact@livhub.jp」までお問い合わせください。
▼お申込み先
ツアーお申込みは下記URLをクリックいただき、申込フォームをご記入ください。
※10名様以上のお申込みでツアーを実施いたします。
後日、旅行会社より個別に申込金、ツアー代金についてのご案内をいたします。
https://ws.formzu.net/fgen/S55536870/
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