暑い、寝苦しい夏。睡眠不足の方も多いのではないだろうか。
そもそも日本人は世界一のショートスリーパーだといわれる。2021年に発表された経済協力開発機構(OECD)の調査によると、平均睡眠時間が1日あたり7時間22分とOECD加盟国の中でも最下位だ。特に女性と子どもの寝不足は深刻なレベルにある(※)。
こうした睡眠不足は、生活習慣病や精神疾患の引き金になるなど、様々な健康問題を引き起こす。不眠は、常に緊張、興奮した状態になりやすい現代社会の課題だ。
そんななか、日本と並ぶ不眠大国であるといわれる韓国では、睡眠用のコンサート「Best Dream Concert」が開催された。このコンサートは、韓国のイベント会社Nominomが手掛けたもの。19時からスタートし、次の日の朝の7時まで、12時間にわたりスローでリラックスできる音楽を漢江のほとりにあるイベントホールで生演奏した。コンサートのゲストにはベッドとパジャマが用意され、軽いヨガをすることも可能だ。
「公演当日、よく眠れなければ全額返金する」という条件の70,000ウォン(約7,700円)のチケットは即完売。大人気のコンサートとなった。
現在、韓国の自殺率はOECDトップと、メンタルヘルスの問題が深刻化している(日本は4位)。調査では、20代の半数近くが「抑うつを感じている」と回答しており、熾烈な競争社会や受験戦争の弊害が指摘されてきたのだ。
こうした韓国社会のトレンドは「Hitting Mung(ぼーっとすること)」。例えば、おしゃべりやスマホを禁止して90分間なにもしないでいられるかを競う「ぼんやりする選手権」が開催されたほどだ。
さらに最近人気なのが「何もしないカフェ」だ。「ソウルの森」の近くにあるカフェ、グリーン・ラボは、完全に無音の空間で「何もしない時間」を提供する。携帯はマナーモード、会話は禁止。こんな場所に、何もしない時間を欲する人々の予約が殺到しているという。ソウル以外の各地でもこうした「何もしないカフェ」がいくつも登場している。
江華島の「何もしないカフェ」のオーナー、Ji Ok-jung氏は米国メディア、ワシントンポスト紙に次のように語っている。
Hitting Mungとは、自分の心と頭を空っぽにして、新たな考えやアイデアで満たすようにするというコンセプトなのです。
さて、こんな韓国のトレンド、疲れ果てた寝不足大国日本とは無関係だろうか。睡眠不足に起因する気分の落ち込み、やる気のなさ。こうした状態が日中の活動に悪影響を及ぼすのは言わずもがな。そんなときにガンバリズム(頑張り抜くことを信条とすること)は禁物だ。心と身体に余裕をもち、再び力強く歩き出せるのを待ったほうがいいだろう。勇気を出して自分を労わり、ぼーっとする時間をつくってみてはいかがだろうか。
【参照サイト】국내 최초 수면 콘서트 ‘베스트드림콘서트’ 5월 2일 세빛섬서 개최
【参照サイト】nominom公式ホームページ
【参照サイト】OECD公式ホームページ Suicide rates
【参照サイト】South Korea’s 12-hour ‘Dream Concert’ is designed to put attendees to sleep
【参照サイト】‘Hitting mung’: In stressed-out South Korea, people are paying to stare at clouds and trees
【参照サイト】7 in 10 Koreans stressed due to coronavirus: survey
Edited by Erika Tomiyama