「移動銀行」が金融サービス格差を解消。高齢化地域や災害時の救世主に

Browse By

人口の比較的多い都市で暮らしていると、駅前などに銀行支店があることは当たり前の光景かもしれない。コンビニエンスストアのATMでは、時間を問わずお金を引き出すことだってできる。

一方で地方では、自宅から最寄りの銀行やAMTまで距離があり、そうした金融サービスを気軽に受けられない人々もいる。車を使えば何とかなるかもしれないが、車の運転が難しい高齢者などはなおさら手が届きにくいだろう。

スペイン北東部のカタルーニャ州でも、こうした問題は起こっているようだ。同国では、オンラインバンキングが普及したことにより、2024年までの過去15年間で約6,000の銀行支店が閉鎖に追い込まれた。これにより、遠隔地や小さな町に暮らす人々の金融サービスへのアクセスがより困難になってしまったのだという。

こうした課題を受け、カタルーニャ州ではATMやそのほかの窓口サービスをバンに積んで遠隔地へ赴く「移動銀行」が2024年9月から始められることとなった。まずはジローナ県から始まり、12月にかけて段階的に訪問する地域を拡大していくという。

この移動銀行は、カタルーニャ政府、総合金融機関CaixaBank、金融サービスチェーンCaixa Enginyersの協力で実現した。AMTでお金を預けたり引き出したりするほか、通常の銀行窓口で受けられるような、銀行口座の開設や閉鎖、クレジットカードの申請、金融相談といったサービスも受けられる。

また、各自治体ごとに、少なくとも月に一度はバンを通過させることが定められており、人口が250人以下の自治体では最低30分、250人以上の自治体では1時間滞在する決まりだ。現在、503のコミュニティを巡る計画だという。

ジローナ

Image via Shutterstock

こうした移動銀行サービスは、日本国内にも存在する。例えば、りそな銀行の資産運用や住宅ローンの相談もできる移動型店舗「りそな号」は、関東や関西の商業施設や団地を定期的に訪れている。

また、2018年に豪雨に見舞われた岡山県総社市では、オリックス自動車が開発した移動金融車「スマイル相談車」が被災地で活躍した。そもそも同社がこの移動金融車を開発したきっかけは、2011年の東日本大震災ですぐには再建できない銀行支店の代わりとなるものを作るためだったという。

地震などの災害が多く高齢化も進む日本では、金融サービスにとどまらず、こうした移動サービスがより幅広い分野で必要となっていくのかもしれない。

【参照サイト】Catalonia launches mobile banking services to small communities
【参照サイト】移動する銀行? 移動するオフィス? 「移動」「サービス」という異なる二つを掛け合わせるオリックス的発想術
【参照サイト】移動銀行窓口車(ATM搭載車)

FacebookTwitter