社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン、IDEAS FOR GOODの編集部が選ぶ、今月の「ちょっと心が明るくなる世界のグッドニュース」。前回の記事では、ダムを建設したビーバーやインドネシアで国内初の給食無料化のニュースなどを紹介した。
日々飛び交う悲しいニュースや、不安になる情報、ネガティブな感情ばかりを生む議論に疲れたあなたに。世界では同じくらい良いこともたくさん起こっているという事実に少しのあいだ心を癒し、また明日から動き出そうと思える活力になれば幸いだ。
愛に溢れた世界のグッドニュース5選
01. イギリスで初めて、女性医師の数が男性医師の数を上回る
「医師」を想像したとき、それは男性だろうか、女性だろうか。おそらく、多くの人は男性を想像するかもしれない。実際、日本における2023年末時点での医師の登録人数は男性が約26.2万人(全体の約76.4%)、女性は約8.1万人(全体の約23.6%)だ(※)。
一方、イギリスでは国内で初めて女性医師の登録人数が男性医師を超えた。女性医師は約16.4万人で、全体の50.04%を占める結果となったのだ。その背景として、医学部に入学する女性が増えていることが指摘されている。1859年に女性医師の登録が可能になって以降、なかなか増えなかった人数が1970年代から増えてきたそうだ。
ジェンダー平等は必ずしも数字では測れるものではない。それでも、この前進は歴史的な先例となるはずだ。
【参照サイト】More women doctors than men for first time in UK|BBC
02. 福岡・香春町の「おじさんトレカ」が人気。地域活動参加のきっかけに
カードゲームの人気が再燃しているようだ。コロナ禍に室内で遊べるツールとして注目を集めただけでなく、数年前からポケモンカードの熱狂的な人気に続き、アプリ内で遊べるカードゲームも注目を集めている。そんな中、一風変わったカードゲームが人気になっている町がある。
福岡県・香春町では、地域のおじさんたちがカードキャラクターになった「おじさんトレカ」が子どもたちの注目の的になっているそうだ。地域でのつながりを生むために考案された。カードに登場するおじさんにサインを求める子どももいるほどで、地域活動に参加する子どもの数が増えているという。元消防団長の本田さんのカードが繰り出す攻撃は「ファイヤーウォール」、元刑務官の藤井さんのカードは「オールラウンダー」と名付けられるなど、本人の得意なことや地域での仕事に関連した特徴のキャラクターになっているそう。
自分の地域なら誰がどんなキャラクターになるだろうか。思わず、そんな想像にふけってしまいそうだ。
【熱中】「おじさんトレカ」子どもの間で流行、”町の実在人物”がカードに 福岡https://t.co/gxWyES2fsn
元消防団長やそば職人など、実在の人物がカードに。考案者は「子どもたちとの関係が地域の中で希薄だった」と説明。「おじさんに会える」との理由で、地域活動に参加する子どもが増えたという。 pic.twitter.com/Yf4nDgS3DZ
— ライブドアニュース (@livedoornews) March 16, 2025
【参照サイト】“おじさんトレカ”謎の大流行 “おじさん沼”にどハマり女子も…町の実在人物がカードに 地域活動参加者は倍増 福岡・香春町
03. 南米ペルーで27の新種の生き物を発見
世界にはまだまだ知らない生命が多く潜んでいるようだ。2024年末、南米ペルーのアルトマヨ地域で地元の科学者やアワフン族という先住民による研究チームが、これまで確認されていなかった27種の新たな生物を発見した。哺乳類4種、魚類8種、両生類3種、蝶10種、昆虫2種が含まれており、新種のコウモリやリス、カエルなどを見つけたという。
アルトマヨ地域はアマゾンの一部で、森林によるカーボンオフセットの対象エリアだ。多くの地域ではカーボンオフセット事業による森林保護に失敗する中で、アルトマヨ地域は森林破壊を止めることに成功していると評されている。一方で、現地で暮らす人々が移動を強いられたという声もあがっているそうだ。
新種が見つかるような、生物多様性に富んだ貴重な地域。そこに根ざす生き物や人の暮らしが優先されることを強く願う。
【参照サイト】27 New Species Discovered in Peru’s Biodiverse Alto Mayo Landscape|Happy Eco News
【参照サイト】‘Nowhere else to go’: forest communities of Alto Mayo, Peru, at centre of offsetting row|The Guardian
04. 世界初、障害のある宇宙飛行士に国際宇宙ステーションのミッション参加許可
民間企業による宇宙ビジネスも広がり、より多くの人が宇宙に行くことができる可能性も出てきた。一方で、これまで宇宙に行った前例がないのが「障害のある宇宙飛行士」の存在だ。そんな中、欧州宇宙機関(ESA)は2021年に宇宙飛行士の募集をかけ、宇宙機関として初めて身体障害者の応募も受け入れていた。
その合格者が、イギリス代表として短距離走でパラリンピックの出場・入賞経験があり、整形外科医でもあるJohn MacFall氏だ。そして2025年2月、同氏が世界で初めて、障害のある宇宙飛行士として国際宇宙ステーションでの6ヶ月のミッションに参加することが許可された。2022年から訓練を開始し、ついに宇宙に飛び立つ準備が整ったのだ。
同氏のミッション参加が実現すれば、パラリンピックに続き、子どもたちにもう一つの可能性を見せてくれることとなるだろう。その瞬間をぜひ見守りたい。
【参照サイト】First astronaut with a disability cleared for space station mission|Positive News
【参照サイト】世界で初めて、身体に障がいを抱えた宇宙飛行士が誕生したらしい!|TABI LABO
【参照サイト】欧州宇宙機関「身体障害者でも宇宙飛行士として応募可能に」|TABI LABO
05. 空気中の水分から作るビール「FromAir®」インドで登場
ビールの製造に「実際に飲まれる水分以上に」水が必要とされることをご存じだろうか。逆浸透膜(RO膜)というフィルターを通して作られるRO水、いわゆるピュアウォーターが必要であり、3,000リットルの地下水から1,000リットルのRO水ができ、そのうち500リットルだけが実際にビールになるという。水不足が社会課題となりつつある今、このウォーターフットプリントを見直すことも必要かもしれない。
インドのブルワリー・The Bier Libraryは、空気中の水分を抽出して製造したビール「Beer FromAir®」の提供を開始した。協働先であるUravu Labsは、シリカゲルで空気中の水分を吸収し、それを再度温めることで水蒸気に変えて水を集める装置を開発している。すべての工程は再生可能エネエルギーによって運営され、グラス1杯のビールあたり、6杯分の地下水を節約できるとのこと。環境負荷の軽減につながるビールの選択肢は、今後も広がりそうだ。
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【参照サイト】World’s First Beer FromAir®: This Pilsner has Zero Groundwater
【参照サイト】Creating Sustainable Water From Air | Uravu Labs