目的地は“焼け野原“。スペインのバイクツアーが山火事の被災地域を巡るワケ

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気候変動の影響で発生した熱波により、世界各地で森林火災が増加している。森林が破壊されると、美しい景観が失われ、その地域の生態系が破壊される。また、そこに足を運ぶ人たちが減ることで、地域の過疎化が進み、農村の経済が打撃を受ける。森林火災は人や生物が暮らす環境だけでなく、経済的、社会的にも深刻な被害をもたらすのだ。

数多くの森林火災に見舞われているスペインで、「La Ruta + Fea(ラ・ルータ・マス・フェア)」という革新的なバイクツアーが始まった。

バイカーたちが走るのは、山火事で焼けた地域だ。たとえば、2022年に山火事が発生したスペイン南東部、バレンシア州アリカンテ県の村アルカラ・デ・ラ・ホバダを横断するルートは、54キロの距離を約1時間20分かけて走る。また、西部のエストレマドゥーラ州に位置するカサス・デ・ミラベテ村や、同じ州にあるユネスコの生物圏保護区としても知られるモンフラゲ国立公園を通るルートでは、2,356ヘクタール(東京ディズニーランド約46個分)以上の土地が焼かれたエリアを含む114キロの距離を約2時間かけて走る。

各ルートは、La Ruta + Feaの公式ウェブサイト上で確認することができ、それぞれのルートには所要時間と距離が記されてある。ルートは、定期的に新しく追加されるという。サイト上には、12以上の高速道路ルートが掲載されており、被災地となった地域でのおすすめ観光スポットなども紹介されている。こうした訪問客は、被災地の経済を活性化させ、過疎化を防ぐ大きな原動力となるのだ。

スペインで起きた山火事の様子。Image via Shutterstock

このプロジェクトの目的は、山火事の現実を直接見てもらうことで、森林破壊の問題を伝えること、さらには観光を活性化することで農村部の雇用を促進することにもあるという。ほかにも、La Ruta + Feaが取り組んでいる「BIKERWOOD」というプロジェクトでは、バイカーが1本あたり15ユーロ(約2,360円)以下で、サイトを通じていつでも植樹支援ができる仕組みが整えられている。

森林火災によって自然が破壊された光景は、見る者の心を痛める。焼け野原のルートを走ったバイカーたちにとって、それは忘れられない記憶となるだろう。

最後に、La Ruta + Feaのコピーを紹介したい。それは「私たちが愛する場所へ戻ろう」。山火事の被害にあった地域も、誰かの思い出の地であり、今後も愛されていく場所なのだ。

【参照サイト】Volvamos a rodar por los sitios que amamos
【参照サイト】La «Ruta + Fea», un innovador proyecto apadrinado por Triumph
【参照サイト】La Ruta + Fea: Touring through burnt, ugly, landscapes for a good cause
【関連記事】#PrayForAustralia オーストラリア森林火災のために私たちができる3つのこと
【関連記事】建築の背景にある植民地主義に向き合う。イギリスの“不快な“街歩きツアー

Edited by Megumi

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