高校生が考案。ルービックキューブに着想を得た住居が、米国のホームレス問題解決の糸口に

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住宅価格の上昇や物価高などを背景にホームレス状態の人は増加している。アメリカでは、2024年末にホームレス状態にある人が77万人を超え、過去最多に至った(※1)

特にカリフォルニア州では、2024年1月時点で18万7,000人以上が、路上やシェルターで寝泊まりしており(※2)、およそ200人に1人がホームレス状態にある。さらに、同州に学生約46万人を擁するカリフォルニア州立大学では、所属学生の8.7~12%の学生がホームレス状態にあることが明らかになった(※3)

ニュースサイト・AFPBB Newsによると「ホームレスの学生の一人は、大学側に状況を説明し、寮の使用許可を求めたが、他の学生に対してフェアではないとの理由で断られたと話した」という。世代を問わず、穏やかに生活できる場所を失うリスクが身近になっているのだ。

同州にはシェルターが存在するものの、必要な数の半分ほどしか提供できていないという。そんな厳しい状況に追い討ちをかけるように、同州のギャビン・ニューサム州知事は2024年7月に「路上生活は、住民や周辺地域にとって危険で不健康な状況を助長する」(※4)として路上で生活する人々の拠点を撤去する知事令を発令した。

強行的な政策への着手が進み、緊張感も高まる中、一風変わった発想ですばやく住居を提供できる方法が高校生によって提案された。同州で暮らすRenee Wang氏のプロジェクト「RUBIX」だ。これは、ルービックキューブのデザインに着想を得たものだという。

一般的な住宅は、壁、窓、ドアなどのそれぞれの部品が設計されたあと、それらを一つの建物に組み込んで建設されている。一方、RUBIXは、まずそれぞれの部屋を独立して作成して組み合わせるモジュール式デザインを採用。

LEGOブロックの家を組み立てるときのように、寝室、キッチン、リビングルームなど、各機能を持つ10ユニットが互いにぴったりはまるよう設計されている。部屋が別々に作られているため、修正や交換が簡単で、環境負荷も少ない。

建材は竹や再生プラスチックがほとんどで、1軒の建設費用は3万3,000ドル(約512万円)以下に抑えられる。一般的なシェルターを運営するためには年間約5万5,000ドル(約854万円)かかるそうだが、RUBIXは基本的には維持費がかからないため、大きなコスト削減につながるのだ。

また、RUBIXのデザインは災害時に仮設住宅としても使用できるのが特徴だ。災害発生後、迅速に建設できる上、停電などが発生した場合でも、屋根に設置されたソーラーパネルで電力を自給できる。また、機械室の上部にバッテリーを追加することもできるため、寒さや暑さが厳しい地域では室温の調整も可能だ。

実際に、ホームレス状態の人たちの意見を聞きながら構想を練られたというRUBIX。Wang氏は、Good Good Goodの取材に対して、やりがいを語っている。

「私は、自分のプロジェクト開発のために適切なデータを集めることができただけでなく、ホームレス状態の人たちの人生の試練や苦難を聴くことで、前向きさ、回復力、優しさに触れることができました。私にインスピレーションを与え、やる気を起こさせ、どんな困難も乗り越えなければと思わせてくれたのは、話をしてくれた方々でした」

Wang氏は、同プロジェクトで奨学金を獲得し、実際にカルフォルニア州内での導入を目指して、模型づくりや政治家・非営利団体と連携をおこなっているという。

家を失い、困難な状況にある人たちが、このようなデザインを通して少しでも安全安心な場所で暮らせる状況が増えることを願いたい。

※1 米ホームレス、18%増の77万人超 物価高などで記録的な伸び
※2 New homelessness data: How does California compare to the rest of the country?
※3 米カリフォルニア州立大学、学生の多くにホームレスと飢えの問題
※4 Supreme Court To Decide Whether Cities Can Keep Homeless People From Sleeping On Public Land

【参照サイト】Teen creates Rubik’s cube-inspired tiny home to help those experiencing homelessness
【参照サイト】Stories of the streets
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