BBCが「脱成長」の短編ドキュメンタリー公開。動画公開から1週間で8万再生突破

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「私たちの経済は、永遠に成長し続けることが本当に可能なのか?」

そんな大胆な問いを、イギリス大手メディアBBCが真正面から投げかけた。

2025年7月8日、BBCの公式YouTubeチャンネルに「Could ‘degrowth’ save the world?(脱成長は世界を救えるか)」と題した約20分間の動画が公開された。欧州の脱成長研究の中心拠点の一つであるスペイン・バルセロナ自治大学やジローナ県の実践例に始まり、この概念がどのように気候変動への抜本的な対応策として浮上しているかを、テンポよく描いている。公開から1週間で再生回数は8万回を超えた。

主に扱われるテーマは「GDPは経済指標として適切なのか」「どの分野は成長して、どの分野は脱成長すべきか」「グリーン成長は解決策にならないのか」など。脱成長を理解するうえで迷いやすいポイントが、数値や研究者の解説を交えて整理されている。

後半には、脱成長に対する批判的な視点も取り上げられている。たとえばイノベーションの軽視や貧困解消の減速といった懸念が示されている。こうして両側面を捉えた動画は、表層的な理解を避けつつも、要点を押さえて手軽に脱成長について理解するための大きな助けとなるだろう。

近年脱成長の議論をけん引してきた経済学者のティモシー・パリック氏は、動画の公開を受けて自身のLinkedInでこう綴っている。

なんと。BBCニュースが「『脱成長』は世界を救えるか?」というタイトルの短編ドキュメンタリーを公開しました。これ自体がすでに奇跡のような出来事ですが、さらに驚くべきは、BBCが「はい、救えるかもしれない」と言っているように見えることです。

(中略)

時代は変わりつつあります。10年前、脱成長は限られた学者や活動家たちが支持する「周縁の」アイデアでした。しかし今では、このテーマに関して多くの側面をカバーする広範な学術文献が存在します。こうしたジャーナリズムによる探究は非常に重要です。それは、単にその言葉を聞いて抱く印象以上に、その背後にあるアイデアが遥かに力強いものなのだと、私たちに気づかせてくれるからです。

BBCは2024年8月に同社サイト内で8分の短編動画「Less is more: Can degrowth save the world?」も掲載するなど、徐々に脱成長への焦点を強めてきた。今回のYouTubeでのより本格的なドキュメンタリー公開は、より広範な視聴者に向けて議論を開く一歩となっただろう。

かつてアクティビストから広がり、近年はアカデミアの世界で議論されてきたオルタナティブ経済の議論が、今や国際メディアの手によって広く市民に届けられ、数万人規模の注目を集めている。動画の存在そのもの、そしてその再生数は、私たちの社会が静かに、しかし着実に変わりはじめていることを物語っている。

【参照サイト】Could ‘degrowth’ save the world?|BBC News
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