自治体が「脱成長」を目指す。スペイン・ジローナ市の気候変動対策

Browse By

欧州や日本を中心に議論が活発化する、脱成長論。環境負荷の削減や社会的不公正の是正を目指して、社会全体の資源やエネルギーの使用量を計画的に減少させようとする動きを指している。

気候危機が深刻化する今、これを「いかに導入できるか」という検討も進み始めている。企業向けに脱成長を取り入れる方法を解説したガイドブックが作成されたり、企業のイベントで脱成長とビジネスの融合が議題に上がる様子も見られる。

一方で、これまで政策面から脱成長を検討する事例は少なく、知見が不足していることが指摘されてきた(※1)。資源やエネルギーの使用量を「計画的に」減少させる点において、広く市民が対象となる政治が背負う責任は大きく、すべての人にとって公正かつウェルビーイングの向上する社会を構築することは、至難の業とも言えるだろう。

そんな中、脱成長論にまつわる革新的な方針が、ある自治体から発表された。2024年4月25日、スペイン・ジローナ市の議会が「気候変動への耐性を高めて適応する策として“脱成長”を政策に取り入れる」と公表したのだ。この取り組みは、脱成長の学術機関・Research & Degrowthやジローナ大学、イギリスの非営利組織・Dark Matter Labsと連携して実施される。

この計画には年間1万ユーロ(約165万円)が拠出され、脱成長に関する研究を政策に取り入れるための方法論やリソースについてのフレームワークの確立が目標とされている。気候危機に対する社会環境的な変革の方法として位置付けられ、最長4年間の取り組みとなる予定だ。

ジローナ市は、バルセロナとフランスの間に位置するスペインの北東部のジローナ県の県都であり、約10万人の人口を擁する。県全体では、1970年から2020年の50年間において、150の環境団体やムーブメントが立ち上がり、2020年時点でその約半数が活動を続けているなど、人口に対する環境系の団体数は比較的多い地域だ(※2)。こうしたアクティビズムの多くが、政治的な計画や規制に帰結してきた歴史があるという。そうした地域性も、今回の方針の合意に貢献したのかもしれない。

同市の気候変動対策評議員を務め、本計画の発表の場にも立ったセルジ・コット氏は、EU議員が主催した国際会議・Beyond Growth Conference 2023などにも言及しながら「数ヶ月にわたって今回の協定に向けて準備をしてきた」と、SNSにて投稿。議会内部からも、関心を持った人々が行動を積み上げてきたことが伝わる。

これまで、自治体として公式に脱成長へと舵を切った事例はほとんど存在しない。ジローナ市の挑戦は、世界レベルにおいても先進的であり、多くの学びを得られる実践例となるに違いない。

※1 Nick Fitzpatrick, Timothée Parrique, Inês Cosme, 2022, Exploring degrowth policy proposals: A systematic mapping with thematic synthesis, Journal of Cleaner Production, Vol. 365.
※2 Nuss-Girona, Sergi, Joan Vicente Rufí, and Guillem Canaleta. 2020. “50 Years of Environmental Activism in Girona, Catalonia: From Case Advocacy to Regional Planning” Land 9, no. 6: 172.

【参照サイト】Notícies – Ajuntament de Girona
【参照サイト】L’Ajuntament de Girona, administració pionera a explorar el decreixement
【関連記事】「グリーン成長はおとぎ話である」今こそ議論したい“脱成長”とは【多元世界をめぐる】
【関連記事】人間中心を超えて都市の正義を問う。ヘルシンキが目指す「マルチスピーシーズ・シティ」とは?

FacebookTwitter