日本では年間約50万トンの衣類が廃棄され、その多くが焼却・埋め立て処分されています。これは大型トラック約130台分が、毎日廃棄されている計算になります。こうした状況を変えるため、衣類の「地域内循環」を目指す新たな実証事業が始まりました。
2025年9月、合同会社CYKLUSとIDEAS FOR GOODを運営するハーチ株式会社は、環境省「令和6年度補正予算 使用済衣類回収のシステム構築に関するモデル実証事業」に採択された新プロジェクト「Community Loops(コミュニティループス)」を横浜・東京・大阪・神戸など複数地域で本格的にスタートさせます。
「Community Loops」では、大学や地域のコミュニティスペースを拠点に衣類を回収。状態に応じてリユース、リペア、アップサイクルを行い、再び地域の中へと還していく取り組みです。就労継続支援B型事業所との協働により、多様な人が参加できる仕組みも特徴です。
2025年10月以降は、各地で「リペアカフェ」を開催し、修繕体験や古着交換会を実施する予定です。リペアカフェとは、オランダ発祥の市民活動で、お店では修理を受け付けてくれない壊れた家電や服、自転車などを地域のボランティアが無料で直してくれる場所。この活動を追った、IDEAS FOR GOODオリジナルドキュメンタリー映画『The Repair Cafe』の上映会も開催し、修理文化の意義を広げていきます。
プロジェクト開始に先立ち、2025年9月12日には横浜・関内でキックオフイベントも開催。テーマは「手放す、めぐる、生まれ変わる」。服と物語の交換を通じ、まちをまるごとクローゼットに見立てる試みです。
「Community Loops」事業の5つの特徴
1. 「修理」と「創造的再利用」で価値を高める循環
「まだ着られるのに捨てられてしまう服」に、リペアやリメイクというひと手間を加え、再び愛される一着へと生まれ変わらせます。
2. 大学との「共創」による次世代への継承
神奈川大学経営学部 道用大介教授のゼミ生を対象に連続ワークショップを開催。デザイン思考や経営工学の専門知識を活かし、課題解決型学習(PBL)を実践することで、サーキュラーエコノミーやサステナビリティの視点を持った次世代人材の育成に貢献します。
また、関西学院サステナビリティ推進本部公認学生団体KG SDGsキャンパスサポーター、国際基督教大学SDGs推進室、青山学院大学でスローファッションに取り組む学生団体Around20とも連携して使用済み衣類回収を実施し、大学コミュニティ内循環の構築とリペアカルチャーの醸成を目指します。
3. 多様な人が活躍できる循環づくり
就労継続支援B型事業所と連携し、障がいのある方や就労困難者の方々と共に衣類の仕分けやリペアを行い、地域内循環モデルに誰もが参加しやすい場を育んでいきます。
4. テクノロジーで服の“物語”を紡ぎ、透明性のある循環作り
NFCタグ(近距離無線通信技術)などを活用し、「回収場所」「分別場所」「リペアの記録」、服が持つ背景や持ち主の思い出といった「ストーリー」を可視化します。次の持ち主へと物語を継承することで、一点ものの価値を創出し、モノへの愛着を深めるとともに、回収後の行き先についての透明性を確保します。
5. ドキュメンタリー映画『The Repair Cafe(リペアカフェ)』との連動によるリペア文化醸成
壊れたモノを無料で修理するオランダ発祥の市民活動・リペアカフェを追った映画『The Repair Cafe』の上映を通じ、修理文化と地域のつながりを再発見します。本作は「修理したいのはモノだけじゃなかった」をテーマに、モノへの愛着や人とのつながりを取り戻す人々の物語を描いています。上映会を通じて、参加者と共に“修理する文化”の価値を再発見し、地域コミュニティの活性化とサステナブルなライフスタイルへの行動変容を促します。
*『The Repair Cafe』特設サイト:https://ideasforgood.jp/documentary-repair-cafe/
廃棄削減を超えて、文化を育む挑戦
実証事業はまず2025年9月から11月にかけて実施されますが、終了後も継続・発展予定です。今後はこの仕組みを「地域内循環モデル」としてパッケージ化し、他の地域やコミュニティへの展開を視野に入れています。また、本事業で得られたデータや知見は社会に対してフィードバックし、日本のサーキュラーエコノミー推進に貢献予定です。
日本の衣類廃棄問題に立ち向かうこの挑戦は、単なる廃棄削減の施策にとどまらず、人とモノ、地域をつなぎ直す新たな文化を育てる試みでもあります。
*Community Loops 特設サイト:https://cyklus.jp/communityloops/
キックオフイベント開催のお知らせ
「手放す、めぐる、生まれ変わる。 服と物語の交換の夜 〜地域をまるごとクローゼットにする『Community Loops』キックオフ!〜」
事業開始に先立ち、キックオフイベントとして洋服交換会を横浜・関内にて開催します。
日時:2025年9月12日(金) 18:00〜20:00
場所:benten103(神奈川県横浜市中区弁天通3-41)
参加費:1,000円
持ち物:不要になった洋服(服と服の交換が成立しなかった衣類は、すべてCommunity Loops事業に活用します)
詳細・申込:Peatix申し込みページ:https://loops.peatix.com/
合同会社CYKLUSについて
「モノを大切に使い続けるカルチャーを育む」をミッションに、サーキュラーエコノミーの社会実装を目指すソーシャルベンチャーです。国内外の先進事例に精通し、企業や自治体と共に多くの循環型事業をプロデュースしています。
公式サイト: https://cyklus.jp/
【参照サイト】服がめぐり、人がつながる、まちのループ環境省採択事業「Community Loops」始動 〜横浜・東京・大阪などで衣類回収と“修理する文化”を推進し、地域内資源循環モデルを構築〜