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当たり前のように見聞きする、コミュニティという言葉。デジタルテクノロジーの発達が支えとなり、その数は急速に増えているだろう。しかし今や、コミュニティは飽和状態。結局のところ何の変化も生まれていないのではないかと、虚無感を覚えることがある。
では、現代のコミュニティには何が欠けているのか──その手がかりをふと感じたのは、意外にも茅(かや)刈りをしていた時だった。

1月末、筆者は季節はずれの陽気に包まれ、草刈り機の「キィーンキィーン」という音を聞いていた。目の前にあるのは香ばしい色をした茅。地域で守られている茅葺き住宅の屋根の素材である茅を、乾燥させ貯蔵しておくのだ。
なぜ、この日のことが「コミュニティ飽和」に関わるのか。それは、茅刈りという場を可能にする、地に足のついたつながりを前にしたとき、世に溢れるコミュニティという言葉が急に希薄なものに感じられたからだ。
茅刈りの日は、あまり多くの言葉を交わさない。草刈り機でカットされた茅を集めて束ね、時報のチャイムが鳴ったら陽に当たっておやつを食べ、また作業に没頭する。ここでは、緩やかな責任や当事者意識が共有されている。小学生からおじいちゃんまでが共に作業をする中で、見よう見まねで技術や知恵が受け継がれてゆく、民主的でゆっくりとした学びの場であり、自然と互いへのケアが生まれる場なのであった。

縄で縛り、整えていく

カヤネズミが使い終わった巣、通称「茅ボール」
一方、インターネットやSNSのおかげで、共通のキーワードに関心を持つ“コミュニティ”もオンラインを中心に数え切れないほど存在する。一つひとつが、心おきなく人とつながり、共感できる場として開かれていると思うと、かつての地縁的な縛りのあるコミュニティよりも自由が認められた、多様性の溢れる場にも感じられる。
ただ、それらの中には、参加メンバーの助け合いというよりも、運営や一部の人から提供される情報を“消費する”サービスに近いコミュニティもある。
ここで問いたいのは、現在謳われるコミュニティ、特に気候変動やビジネス手法など共通のテーマのもとで情報共有や共創を目指して立ち上げたコミュニティにおいて、一人ひとりが小さな貢献をする状態は持続するのかということ。参加者がフリーライドしたくないと思うほど愛着を持ち「怠惰な傍観者」にならぬよう努力することは、稀なようだ。
現代では、個人化が進んだことで、自由に人とのつながりが選べるようになった。しかしもはや、つながりの場は供給過多となり、コミュニティそのものに対する明確な当事者意識を持たないまま、個人が複数のコミュニティをあちこちへ浮遊するような状態にあるのかもしれない。
これは個人にとって非常に流動性が高く、そのおかげで自由や安心を感じる場合もあるだろう。しかし同時に、一つのコミュニティそのものを捉えたとき、参加者が持ち寄る努力や貢献の度合いが希薄になりやすく、集団内での学びの共有や助け合いが起きにくくなっているように見える。これは多くの目的ベースのコミュニティが掲げる共創などの目標から逆行するのではないだろうか。
そんな形骸化を克服するには、コミュニティに「誰かに代わることのできない要素」を持ち込むことが重要だと捉えている。その鍵となる考えの一つが、土地(Land)との再接続である。
それは、農作業や自然とのふれあいではない。かと言って、生まれ育ちに強要されるつながりでもない。「私はその土地に住んでいる」または、住んでいなくても「私はその土地の人・自然から恩恵を受けている」という、他者に代替されにくい事実や自覚を緩やかな軸としつつ、身体を伴う作業を共にする時間が、コミュニティには大切なのだ。その共通経験が、集団内に信頼を生み、ある程度の責任感と努力、相互ケアを支えているのではないだろうか。
対照にあるテーマ軸のみのコミュニティでは、「そのテーマに関心がある」という意識が繋がる理由になる。しかしその意識は、「私以外の誰か」に取って代わることが起きやすいもの。また「この土地」「この場所」という代替不可能で物理的な対象が共有されていないため、コミュニティ内で行動を起こさないことの結果も見えにくいのだと考えられる。

こんなことを、皆が茅刈りをしながら考えていたわけではないだろう。筆者も、ほんの少し手伝ったに過ぎないが、今思い出されるのは、陽の暖かさと茅の擦れる音、ほど良い疲れと、何を話すでもなく共に何かをつくることの心地良さなのだ。
ただし、こうしたコミュニティの存続が難しくなっているのが現実でもある。現代が生み出そうとするコミュニティの本質は、これまで受け継がれてきたにもかかわらず、私たちが見失いつつあるのだ。
都市やデジタル空間に展開されていくコミュニティは、それを新しい形で受け継ぎ、誰かに代わることのできない繋がりを築き、共に行動を起こしていくことができるのだろうか。
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