見知らぬ誰かと、1日1通。1カ月スローにやりとりする、デジタル文通サービス

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アルゴリズムによって、あらゆるものが「最適化」される時代。人との出会いやコミュニケーションも、その例外ではない。

スワイプひとつで、アプリにおすすめされた相手との関係が始まり、終わっていく。タイムラインには、近い関心を持つ人の投稿が並び、「いいね」をもらうため、あるいは炎上しないため、見られていることを意識した言葉が飛び交う。便利で効率的なはずのコミュニケーションが、ときに私たちに窮屈さをもたらしているのだ。

そんな“最適化されたつながり”に、問いを投げかけるサービスがある。アメリカで生まれた、1カ月限定のデジタル文通サービス「Month Friend(マンス・フレンド)」だ。

Month Friendでは、見知らぬ誰かと、1カ月間、毎日1通ずつメールを交換する。やりとりをする相手は自分で選ぶことはできず、ランダムにペアが設定される仕組みである。

事務局からは「好きなスープは?」「今一番誇りに思っていることは?」といったトークテーマのヒントが送られてくる。フレンドは、それに答えるもよし、それを無視して気になることを質問するもよし。ちょっとした日常の話や考えていること、あるいは不安、希望、夢などを自由に、気ままに分かち合う。そして、1か月が経ったらそこで文通は終了だ。

メールのやりとり

Month Friendが目指したのは、サマーキャンプで偶然隣り合わせた見知らぬ誰かと、短い期間だけ深く語り合うような体験である。期間が終われば二度と会うことがないかもしれないのに、偶然隣り合わせた人とすべてを共有するような……あの切なくも濃密な人間関係の再現を、事務局は試みた。相性が合うかどうかも分からない相手と、1カ月という限られた時間の中で言葉を交わす。その不自由さの中にこそ、今の時代にはこぼれ落ちがちな対話の質が宿るのではないかと考えているのだ。

現代社会では、テクノロジーの進歩によって多くの作業が高速化しているにもかかわらず、人々の生活はむしろ忙しくなり、時間の余裕を感じにくくなっている。これを、社会学者ハルトムート・ローザは「社会的加速(Social Acceleration)」と呼んだ。

あえてスローなぺースで言葉を交わすMonth Friendのような仕組みは、こうした加速社会に対する小さなブレーキとも言えるだろう。効率を追い求めるのではなく、ゆっくりとした対話を取り戻すこと。その体験自体が、現代社会に対する一つの問いになっているのかもしれない。

無限の選択肢と最適化のアルゴリズムの中で、私たちはどんなつながりを求めているのだろうか。便利さの先でこぼれ落ちたものに、改めて想いを馳せてみたい。

【参照サイト】Month Friend
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