アドテクが生んだ理不尽。LGBTQメディアを救う、米代理店のキャンペーン

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現在、LGBTQ関連のさまざまなメディアが存在しているが、こうしたメディアが広告費を集めにくいという問題を抱えていることを知っているだろうか?

その理由は「キーワード除外リスト機能」にある。キーワード除外リスト機能とは、適切でないメディアに広告が掲載されることのないように、特定の単語やフレーズを含むメディアを広告の掲載先から自動的に除外するものである。

この機能は、差別的、暴力的コンテンツや、物議を醸す政治ニュースの載ったメディアに広告が掲載されないようにするのには有効だ。しかし、LGBTQ関連のメディアも、「セクシュアリティ」、「クイア」、「ゲイ」といった言葉を含むことから除外の対象となってしまうことが多い。これらの言葉は人を力づけたり肯定したりする表現として使われることがあるにも関わらず、だ。キーワード除外リスト機能は特定のキーワードが使用される文脈までを理解する情報処理の技術に欠けているため、全体としてLGBTQに関連した出版物やメディアが広告掲載先として選ばれなくなってしまうのである。このことによって、LGBTQコミュニティは大きな影響を受け、広告費を得られない多数の出版社が閉鎖されたり、大幅に縮小されたりしてきた。

この問題に対し、世界的なメディア・エージェンシーMindshare USAが、LGBTQに関連する出版物やコンテンツをサポートすることができる、LGBTQ専門の新しい広告購入プラットフォームの提供を開始した。このプラットフォームでは、LGBTQ関連のメディアや出版社を1つのリストに集約しており、広告主はこのプラットフォームを利用することで、LGBTQに関連する様々なコンテンツを積極的に支援できる。MindshareUSAとLGBTQコミュニティメンバーによる調査では、LGBTQメディアに広告を掲載することで、LGBTQでないメディアに掲載した場合よりも多くのLGBTQの人々が商品を購入するなど、広告主にとっても有用であることが発見されたという。

LGBTQの人々の声やジャーナリズムを支援してきたアメリカのウォッカブランドSKYY Vodkaは、この広告プラットフォームのローンチパートナーとして契約し、逆境に直面しても明るく輝き、多様性を賛美する人々にフィーチャーした“Proudly American”というキャンペーンを実施した。

SKYY Vodka advertising

SKYY Vodkaの“Proudly American”キャンペーンの広告が掲載されている。 Image via Mindshare USA

広告掲載の安全性を確保するためのツールやテクノロジー、ガイドラインは、広告主によるメディアへの投資を保証する上で重要な役割を果たしてきた。しかし、キーワード排除リスト機能の技術の課題によって、マイノリティのメディアが意図せずに広告掲載先から排除されてしまう状況があった。LGBTQに関して誤解や偏見や差別がなくなっていない現状では、メディアやジャーナリズムが果たす役割はとても重要である。Mindshare USAが提供するようなプラットフォームがマイノリティのメディアを保護し、必要な人に適切な情報が届く社会になることを願いたい。

【参照サイト】SKYY Vodka And Mindshare USA Take A Stand To Support LGBTQ Journalism

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