ごみの分別やリサイクル制度は整っているはずなのに、いざ日常の中で行動に移そうとすると、意外とわからない。修理はどこでできる?借りられるものはある?今週末参加できる、近所のサステナブルなイベントは?
住民のこうした問いや戸惑いに応え、サーキュラーエコノミーを概念から具体的な行動へとつなげるため、アムステルダム市が公開したのがスマホアプリ「Shift」だ。2025年11月21日に市民向けに提供が開始され、2026年2月には市内全域へと本格展開された。このアプリは、アムステルダム市の気候・エネルギー課とサーキュラーエコノミー課が共同で立ち上げたもので、市の気候戦略を市民の日常に落とし込むことを目的としたプラットフォームである。

Image via Shift World
Shiftは2025年、アムステルダム東地区で約700人が参加するパイロットとして始動した。住民や事業者からの好意的な反応を受け、現在は1,000人以上が利用し、300以上の持続可能な取り組みや事業が登録(2026年2月現在)。さらに8人のボランティアがアンバサダーとして地域でアプリを紹介し、同じ関心を持つ住民同士のリアルなつながりを作っている。
アプリを起動すると、ユーザーはプロフィールを設定することができる。関心分野として、休暇・レジャー、住宅・エネルギー、食品・飲料・商品・衣料、車・バイク・公共交通機関、自然などのカテゴリを選択。郵便番号と番地を入力すると、自分の生活圏に即した情報が表示される。

Image via Shift World
その後、簡易的なCO2フットプリント診断が提示され、回答内容に応じた身近なアクションが提案される仕様だ。現在地周辺で参加できる活動として、住民が集い修理を楽しむリペアカフェ、工具やアウトドア用品のシェアスポット、地域の清掃団体、地元産野菜の販売所、衣類レンタルや交換イベント、コミュニティガーデンなどがマップ上に可視化される。
さらに、アプリを通じて専門家から個人的なアドバイスを受けることも可能で、より具体的な困りごと(断熱改修の方法や効率的なエネルギー利用など)にも対応している。
「より持続可能な暮らしをしたいが、どこから始めればよいか分からない」──そんな悩みに寄り添い、Shiftは1人ひとりに合わせて地域の取り組みや企業と結びつけることで行動変容を後押しできるのだ。
開発を担う社会的企業「Shift World」は、過去2年間の行動変容プログラムで参加者1人あたり平均25%のCO2削減を達成してきた実績を持つ。その知見を活かし、アプリではパーソナライズされた提案やクイズ形式の学習、専門家への相談機能などを通じて、無理なく行動に移すことができる導線を組み込んでいる。
サステナビリティ担当のジタ・ペルス市会議員は、「アムステルダム市民全員が協力することで、循環型社会への移行を真に加速させることができます。何千人もの小さな選択が、正しい方向への大きな一歩となるでしょう」
と、市の公式発表のなかで述べている。
全市展開に合わせ、街中には「How small is your footprint?(あなたのフットプリントはどのくらい小さい?)」というグラフィティが登場し、開始を祝うパーティーも開催された。サステナビリティを義務ではなく参加型のムーブメントとして提示する演出だ。
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アプリは英語とオランダ語の両方に対応し、住民だけでなく観光客も利用できる。観光都市アムステルダムにおいて、リペアカフェやコミュニティガーデン、地域清掃活動などに参加することもまた、この街を体験・堪能する一つの方法になりつつある。オランダを訪れる機会があれば、観光地を巡るだけでなく、ぜひこのアプリを通して地域の循環活動にも触れてみてほしい。
アムステルダムは2030年までに天然資源(新材)の使用量を50%削減し、2050年までに完全循環経済への移行を掲げる。Shiftは、その長期目標を市民の具体的な日常行動へと結びつける試みであり、今後はオランダ国内の他自治体への展開も視野に入れている。
完全な循環経済は、巨大な施設から突然生まれるわけではない。今日どこで何を借り、何を直し、何を選ぶか。その積み重ねが2050年へとつながる。Shiftは、その選択肢をスマートフォンの中に提示し、都市の移行を着実に後押ししている。
【参照サイト】Gemeente Amsterdam(アムステルダム市)
【参照サイト】“Duurzame Amsterdamse initiatieven en ondernemers in één app”
【参照サイト】The Shift app
Edited by Erika Tomiyama






