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脱炭素社会に求められる事業開発ワークショップから学ぶ、アイデア創出のヒント

アイデア

written by Climate Creative 編集部

未来の脱炭素社会に求められること──それはこれまでの化石燃料に頼る社会からの転換である。新しい社会のあり方、新しいライフスタイルの実現に向けて、私たちには今、どのようなアイデアが求められているのだろう。

新規事業を考えるとき、社内で議論を重ねても業界に対する固定観念や先入観が邪魔をして、「新しいアイデアが浮かばない」「会議が活性化しない」ということはないだろうか。

同じ興味関心や分野に普段触れている人々だけで話し合うと、どうしても考えが凝り固まってしまうことがある。本記事では、普段クライアントの新規事業開発に携わる筆者が、アイデアを創出するための2つのヒントをご紹介する。

1. 多様なワークショップ参加者同士が起こす、化学反応

アイデアがなかなか浮かばないクライアントの課題を解決するために、筆者が実施したアイデアの一つ目は、「異業種の人々をごちゃ混ぜにする」ことだった。

クライアント企業の業界とはまったく無縁のフリーランスや専業主婦、大学生など、多様な参加者で構成したワークショップを実施。

結果として、業界の慣習やルールを良い意味で無視したディスカッションが展開され、ワークショップが大いに盛り上がったのだ。すでに言い尽くされてきたことではあるが、アイデアを考えるときやチームを編成する場合、関係者に多様性を持たせた方が、イノベーション価値の高いアイデアを生み出す確率が上がることを実感した瞬間であった。

「アイデア」と「組み合わせ」の2つのキーワードで想起するのが、世界的なベストセラーでありロングセラー、ジェームス・W・ヤング氏による『アイデアのつくり方』ではないだろうか。同書には、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」ということが記されている。

もう一つは、同じ目的のために複数人が自由に意見交換をする会議手法である「ブレーンストーミング」の考案者、オズボーンの「チェックリスト」。これは、下記の9つの視点からアイデアを生み出す発想方法であり、この中の一つにあるのが、「組み合わせ」である。

1.他に使い道は?
2.応用できないか?
3.修正したら?
4.拡大したら?
5.縮小したら?
6.代用したら?
7.アレンジし直したら?
8.逆にしたら?
9.組み合わせたら?

冒頭で示した「多様な参加者で構成されたワークショップによるディスカッションの活性化」──これは『アイデアのつくり方』が示す「既存の要素の新しい組み合わせ」であり、オズボーンのチェックリスト「組み合わせ」を意識せずとも実践した例に他ならない。

2. テクノロジー要素を無理やり組み合わせてケタ外れのアイデアを考える

上記に示すもはや古典的とも言えるベーシックなアイデア発想法を、今の時代に合わせて昇華し有効なツールとして『エクスポネンシャル思考』で紹介されているのが、28枚のカードで構成される「エクスポネンシャル・カード」よ呼ばれるものだ。

本書によれば、「世界を変えるようなイノベーティブなアイデアは、テクノロジーとテクノロジーの交差点で生まれる」とされている。つまり、このカードは、ケタ外れのアイデアを、新しいもの同士を組み合わせることにより実現するツールなのだ。

28枚のカードは「ビッグデータ分析」「人工臓器」「デジタル取引」「自動運転車」「ナノ素材」「機械学習」などの最先端のテクノロジーで構成されている。具体的な使用方法は、解決したい課題に対して、28枚のカードからランダムに2枚のカードを抽出し、2つのテクノロジーの組み合わせにより解決できるアイデアを数分の限られた時間でひねり出すというシンプルなもの。

エクスポネンシャルカード

エクスポネンシャルカード

一見、困難と思えるワークではあったが、2つの異質な要素を無理やり「組み合わせる」という制約が、かえってアイデア創出の手助けになっていた。効果的なアイデアを効率的に生み出すためには、優れたフレームワークやツールを有効活用しながら、限られた制約の中で不完全でも未熟でもいいから無理やりアイデアをひねり出すことが重要だということだ。

「多様な人材」が交わったからこそ、ルネッサンスが花開いた15世紀

各地で多くの創造的な人々が活躍し、すぐれた芸術作品が生みだされた時代、ルネッサンス。この時代の重要人物として、メディチ家が挙げられる。メディチ家はかつて、ミケランジェロやダ・ヴィンチのパトロンとしても有名で、ルネサンス期に銀行業で財をなしたと言われる。

このメディチ家がさまざまな分野の文化人やアーティストを支援したことで、多様な才能を持ち合わせた多くの人材がフィレンツェに集結することになった。そうして、結果的に異なる分野の文化や学問、芸術が交差し、混じり合ったことで、15世紀のイタリアのフィレンツェを中心としたルネッサンスが花開いたのだ。

「思考が凝り固まっている」という人は、メディチ家にならい、異質な要素が交わる場を作ること、そして異質な要素を無理やり組み合わせることから始めてみてはいかがだろうか。そうすることで、新しいアイデアに出会えるかもしれない。

【参考文献】『学際的コラボレーション」のジレンマ』(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2004.12)
【参考文献】『アイデアのつくり方』ジェームス・W・ヤング(CCCメディアハウス)
【参考文献】『エクスポネンシャル思考』齋藤 和紀(大和書房)

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