ホームレス問題
ホームレスとは(What is Homelessness)
ホームレスは日本では主に住む場所のない路上生活者を指す時に使われる言葉です。2002年に定められた法的な定義としては、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」とされています。
なお近年は、「ホームレス」はその人の置かれた状態を指す言葉であるため、「ホームレス状態」や括弧つきで「ホームレス」と表記するのが一般的です。
目次
数字で見るホームレス問題(Facts & Figures)
日本と世界のホームレス問題の数値をまとめました。
- 2022年1月、日本でホームレス状態の人は約3,448人(男性3,187人、女性162人、不明99人)(厚生労働省)
- 上記調査で、ホームレス数が多かった都市は、大阪府(966人)、東京都(770人)、神奈川県(536人)(厚生労働省)
- 2021年11月、約1,300人を対象に実施された調査によると、ホームレスの人の平均年齢は63.6歳で、前年より2.1歳上昇(厚生労働省)
- 2021年11月、路上生活期間が10年以上に及ぶ人は40.0%で、前回より5.4%上昇(厚生労働省)
- 2021年11月、新型コロナウイルス感染拡大によってホームレス状態になったと回答した人は、6.3%(厚生労働省)
- 東京都内でネットカフェに宿泊している住居喪失者は約4,000人(東京都)
- 2020年、アメリカでホームレス状態の人は約58万人(USA FACT)
- ホームレス状態の人が最も多い国はフィリピンで約450万人。そのうち約300万人が首都マニラに在住(ロイター)
- アメリカでホームレス状態の退役軍人は約38,000人(フォーブス)
ホームレス問題は人の流動性の影響が大きいため、正確な数値を把握することに困難が伴います。
米国やEUの一部の国では、ホームレス状態の定義が日本より広い例も見られます。それらの国では、「望まない同居」「DVなど不適切な住環境」「友人・知人の住居に宿泊」「福祉施設に滞在」といった状態もホームレス状態に含まれたり、「56日以内にホームレス状態になりそう」な状態を福祉支援の対象とする例も見られるなど、定義も様々です。
ホームレス状態の原因(Causes)
個人がホームレス状態になる経緯は人それぞれですが、既存の調査からは共通点も見えています。
多くの場合共通するのは、雇用政策や景気など社会的構造の影響を受けやすい状態にあることと、生活課題を抱えたときに適切なサポートが受けられず、複数の課題を抱えてホームレス状態に至るという2点です。
90年代のホームレス状態の方は、多くが製造業や建設業で非正規職員を経験していたとする調査結果が多数みられます。このような社会構造の影響は、2004年の製造業派遣解禁など労働政策の動きによるところが大きいと言われています。非正規労働者が景気の悪化を受けて突如契約を打ち切られる事例として、2008年のリーマンショックと年越し派遣村のニュースを覚えている方もいるのではないでしょうか。
また、必要なサポートが受けられないこともホームレス状態に至る要因の1つです。虐待家庭での養育や金銭問題、精神疾患や障がいなどの生活課題を抱えながら、適切な公的支援につながらなかったり、社会的に孤立する可能性が高くなる例もみられています。非正規雇用の状態から失業し、家賃が払えなくなって住所を失い、住所がないため再就職できず、役所側によって申請を出させないように水際作戦をされて生活保護も受給できないような悪循環も引き起こされます。
早期に必要なサポートを受けられないことで、生活課題を複数抱えて状態が悪化する傾向が見られています。
ホームレス状態はなぜ問題なのか?(Impacts)
日本がホームレス支援の根拠としている法律(ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法)では、支援が必要な背景を「ホームレスとなることを余儀なくされた者が多数存在し、健康で文化的な生活を送ることができないでいる」としています。
ホームレス問題は、個人の意思にかかわらず社会構造によってもたらされており、それによって生きる上の基本的人権が確保されていない状態として解釈できるでしょう。90年代のバブル崩壊後や2008年のリーマンショック後にホームレス状態の方が急増したことを受けて、社会構造がホームレス問題に与える影響への理解が浸透しつつあります。
米国やEUの一部の国では、ホームレス問題は若年失業率の高さや住宅政策の失敗などによる問題とされることもあり、解決のための住宅政策や若年雇用政策が見られます。社会構造で個人の生活に影響を与え、憲法で人権として保障されている水準の生活を確保できていない状態が、ホームレス問題に表れているといえるでしょう。
ホームレス問題のためにできること(What We Can Do)
ホームレス問題を解決するために私たちに何ができるでしょうか?大きく分けて、「直接支援する」「ホームレス状態の方を雇用している企業を支援する」「問題について知る・伝える」といったアクションが可能です。
直接支援する方法
ホームレス状態の方を雇用している企業を支援する方法
問題について知る・伝える
その他、自身の仕事のスキルを活かして、プロボノとして支援団体の運営を手伝うこともできます。
ホームレス問題に関する団体
自治体としては、東京都が、インターネットカフェや漫画喫茶などで寝泊まりしながら不安定な就労に従事している方や離職されている方に対して、生活支援、居住支援、就労支援および資金貸付相談などを実施しています。
また、日本国内でもさまざまな団体がホームレス問題に取り組んでいます。以下は、代表的な団体の一例です。
- 認定NPO法人世界の医療団
- 認定NPO法人もやい
- 認定NPO法人Homedoor
- NPO法人抱撲(ほうぼく)
- 認定NPO法人ビッグイシュー基金
東京都内の複数の支援団体とコンソーシアムを形成。ホームレス状態の方に必要な医療を提供しながら、住居を提供するハウジングファーストモデルを実施しています。
住居問題を中心に継続的な支援の実施や生活相談を提供することで、社会的な孤立を解消しつつ生活の基盤づくりを支えています。
ホームレス状態の方に食事やシェルターを提供し、就労支援や賃貸入居までサポートしています。上記のHUBchariを運営している認定NPO法人です。
1988年に立ち上がった団体で、現在1,900人以上がボランティアとして活動しています。当初は、ホームレス支援から始まりましたが、現在では高齢者や障害者の支援、まちづくり事業まで、孤立した人を支えるさまざまな活動を行っています。
ホームレスの人たちを中心に困窮者の生活自立応援、ホームレス問題解決のネットワークづくりと政策提案、ボランティア活動と市民参加
の3つの事業を柱に貧困問題の解決を目指す団体です。
ホームレス問題を解決するアイデアたち
IDEAS FOR GOODでは、最先端のテクノロジーやユニークなアイデアでホームレス問題解決に取り組む企業やプロジェクトを紹介しています。