ロンドン名物の二階建てバスがホームレス相談所に

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ホームレスの人々が必要とする支援とは、どのようなものだろうか。

ホームレスの人々を支援する慈善団体クライシスは、2021年12月、イギリスで22万7千世帯がホームレス状態にあると発表した(※1)。この中には、路上、車、倉庫で寝泊まりせざるを得ない人や、環境の悪い宿で生活せざるを得ない人が含まれる。ホームレスには様々な形態があり、深刻な問題となっている。

そんななか、イギリスの社会的企業Change Pleaseは2021年10月から、二階建てバスで、ホームレスの人々が必要とするサービスを提供している。

サービスの内容は、無料の健康相談、散髪、歯の手入れ、デジタルスキルトレーニング、銀行の口座開設サポート、就業支援、シャワー、メンタルヘルスサポートなどだ。新型コロナウイルスのワクチン接種を実施することも、視野に入れている。

ロンドン名物の二階建てバスを、ホームレスの人々を支援する場所に変えるという発想がユニークではないだろうか。同社は使われなくなった中古バスを3台購入し、座席を取り外して、このプロジェクトのための空間をつくった。

バスを使うメリットは、支援を必要とする人がいる場所に移動できることだ。Change Pleaseのバスは週5日稼働し、そのうち2日間は、ハックニー市庁舎のすぐ近くなど決まった場所に停車。あとの3日間は、ロンドン中心部の大通りであるストランドなど、ホームレスの人々が集まりやすい場所をランダムに巡る。

決まった場所に2日間停車するのは、ホームレスの人に「この場所に行けば支援を受けられる」という安心感を提供することも重要だと考えているからだ。将来的には、夜にChange Pleaseのバスを他社のバスターミナルに停め、他のバスで眠っていて降ろされたホームレスの人々を受け入れる体制も整えようとしている。

Change Pleaseは、バスを宿泊所として提供する予定はないという。「宿泊所は移動させる必要がないから」というのが、その理由だ。ホームレス支援には様々な種類があるため、自分たちの力を最大限に発揮できるのはどの部分なのか、見極めることが求められるだろう。

Change Pleaseは2015年に立ち上がった企業で、メイン事業はコーヒーの販売だ。ホームレスの人々にバリスタトレーニングを提供し、彼らの自立に必要な、就業の機会の確保に努めている。今回のバスのプロジェクトは、コーヒー事業を通じて得た利益の一部を振り分けることで成り立っているという。

衣食関係、宿泊関係、行政手続関係、医療関係、就労関係など、ホームレス支援の内容は様々だ。あなたが「ホームレスの人を支援したい」と思ったとき、どの側面から支援したいのかも合わせて考えてみるといいかもしれない。

※1 227,000 households across Britain are experiencing the worst forms of homelessness | Crisis | Together we will end homelessness
【参照サイト】 Driving For Change – Change Please
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