ソーラーパネルの廃棄・リサイクル問題
ソーラーパネルの廃棄・リサイクル問題とは?(What is solar panel waste and recycling?)
日本では、2012年から始まった再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)(※1)によって、ソーラーパネル(太陽光パネル)が大量に導入されました。製品寿命が約25年から30年と言われており、2040年には大量の廃棄物の処理が課題になります。下記の図が示しているように(※2)、世界全体でもソーラーパネルによる発電量が年々伸び続けていることから、導入量が増えていることが伺えます。そのため、今後寿命が過ぎたあとのパネルの廃棄・リサイクルは世界規模で問題となります。
国内では適切なリサイクルスキームが確立しておらず、産業廃棄物処理には費用がかかるため、設備の不法投棄や放置を危惧する声があります。現にすでに一部が新しいものに取り替えられたり、故障したりという理由によって、寿命を待たずに廃棄されています。
そして、廃棄されたパネルの一部にはセレンやヒ素、鉛など微量の有害物質が含まれていることがあるため、リサイクルが困難な状況です。そのため、廃棄される際の処分方法が懸念されています。
(※1)2009年に開始された買取制度は、太陽光発電で作られた電力のうち、 余剰電力が買取対象となる制度
(※2)IEA (2020), Solar PV, IEA, Paris
目次
数字で見るソーラーパネルの廃棄・リサイクル(Facts&Figures)
ソーラーパネルの現状に関する数字と事実をまとめています。
世界
- 2018年末までの国別に見た太陽光発電の累積設備容量(導入量)は、1位中国、2位アメリカ、3位日本(REN21)
- 2018年末までの一人当たり太陽光発電の累積設備容量(導入量)は、1位ドイツ、2位はオーストラリア、3位日本(REN21)
- 2050年までに世界中で発生するソーラーパネル廃棄物の総量は7,800万トンと推定(IRENA)
日本
- 日本の住宅用(10kW未満)太陽光発電導入件数は、2,377,832 件(2017年度)。住宅総数の8.3%(一般社団法人 太陽光発電協会)
- 年間約4,400トンのソーラーパネルが使用済となって排出されており、そのうち約77%の3,400トンがリユースされ、残り約1,000トンがリサイクルまたは処分されていると推計(環境省)
- 2050年までに日本中で発生するソーラーパネル廃棄物の総量は750万トンと推定(IRENA)
- 廃棄ピーク時には、使用済みソーラーパネルの年間排出量が、産業廃棄物の最終処分量の6%におよぶという試算(経済産業省資源エネルギー庁)
ソーラーパネルの廃棄・リサイクルはなぜ問題なのか?(Harm)
現在最も広く普及しているソーラーパネルの種類である「シリコン系」の素材構成の比率は、ガラスが1番大きく、次に樹脂EVA等、そしてアルミの順になっています。ソーラーパネルの7〜8割を占めるガラス部分には、ガラスを透き通らせたり、柔らかくさせたりする効果がある鉛などの有害物質が含まれていることがあります。
そのため、ソーラーパネルを各素材に解体し、ガラス部分を再度リサイクルしてガラスに戻しても、有害物質を含有している可能性があるため、買い手となるメーカーがいません。ガラス原料製造業・リサイクル会社の飯室商店によると、世界中のソーラーパネルメーカーが異なる素材を使用しているため、ソーラーパネルを見ただけでは有害物質が入っているか否かの判断は困難だそうです。
その結果、ソーラーパネルが解体された後、ガラス部分は粉砕され、セメントの原料として再生されるか、埋め立てられています。セメントになる場合、有害物質の含有量が国が定める基準以下に抑えられているとはいえ、長期的な溶出には注意する必要があるでしょう。また、環境省の調べでは、2017年度の最終処分量と2018年4月1日時点の最終処分場の残存容量から最終処分場の残余年数を推計すると、全国では16.4年であり、首都圏では5.0年という結果が出ています。このままソーラーパネルがリサイクルされずに埋め立てが進むと、最終処分場を圧迫することが予想されます。
ソーラーパネルの廃棄・リサイクル問題が存在する原因と対策(Causes&Solutions)
ソーラーパネルのリサイクルについては、ガラス部分と金属部分を破砕せずに分離しアルミフレームをリサイクルするなど、技術研究が進んでいます(※3)。一方、ガラス部分については、ソーラーパネルメーカーから有害物質に関する情報提供が適切になされていないことが、次のガラスの買い手が見つからず、リサイクルではなく埋め立てられてしまう要因の一つとして挙げられます。また現時点では、廃棄されるガラスのロットが少なく、買い手からすると利便性が少ないという理由もあります。
そして、ソーラーパネルの廃棄・リサイクル問題が発生する根本原因は、設計時に適切な処理方法まで考慮がなされていなかったことにあります。
リサイクルするためには、それぞれの素材に分離する必要がありますが、ソーラーパネルの重量の大部分を占めるガラスは、樹脂で固められていることからはがしにくく、はがし取っても、ガラスと異物が混ざっており、リサイクルが困難な状態です。
一度デザインされてしまうと、あとで修正することが難しいため、ソーラーパネルをデザインし製造する段階で、廃棄後のことを考えて製品をデザインすることが大事になります。これは、国際的なサーキュラーエコノミー推進機関として有名なエレン・マッカーサー財団が唱えるサーキュラーエコノミーの原則の一つ「ごみ・汚染を出さない設計」でもあります。
廃棄・汚染につながらず、長く使うことができ、その後自然に返すことができるよう、もしくは資源として使い続けられるように考えなければならないのは、一番初めの設計の時点なのです。飯室商店の飯室氏も、ごみや汚染となってからでは、資源の有効活用においてできることが限られてしまうため、ソーラーパネルの設計の段階からリサイクル業者も巻き込んで欲しいと訴えていました。
(※3)環境省「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」
ソーラーパネルの廃棄・リサイクルに関する世界の取り組み(Global trend)
日本や世界最大のソーラーパネル市場である中国には、確立したリサイクルスキームや処理規制がありません。
一方、欧州では2014年から、メーカーによるソーラーパネルの回収・リサイクルが制度上義務づけられました。また、ヨーロッパにあるソーラーパネル関連の会社が集まり設立した、ソーラーパネルの回収・リサイクルスキームの構築を目的とした世界初の業界団体「PV CYCLE」が2010年より活動を開始しています。PV CYCLEは、フランスに本社を置く総合環境サービス会社Veoliaと協働し、2018年欧州で初となるソーラーパネルのリサイクル工場を設置しました(※4)。95%のマテリアルリサイクル率を目指し、回収されたパネルをアルミやシリコン、ガラスに分解後、原料として再生しています。
(※4)Veolia“The first recycling plant in Europe for solar panels!”
ソーラーパネルの廃棄・リサイクルを解決するアイデアたち(Ideas for Good)
2020年10月現時点で、IDEAS FOR GOODでは、ソーラーパネルの廃棄・リサイクルに関する事例をまだ掲載できていませんが、すでに実現されているアップサイクル事例をご紹介します。
ソーラーパネルを天板に使ったテーブル
株式会社モノファクトリーと株式会社オープン・エーの共同事業「THROWBACK PROJECT」では、ソーラーパネルを天板にアップサイクルしてテーブルを作っています。
オフグリッド型の可動式ソーラー充電ステーション
ドイツの会社「SunCrafter」は、ソーラーパネルをアップサイクルしてオフグリッド型の可動式ソーラー充電ステーションを開発しています。電気が手に入らない場所やイベントなどで活用されています。