360°動画で伝える「Digital for Good」。ヴァージン・メディアのCSR報告

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IDEAS FOR GOODでは先週にもゲーミフィケーションを用いたハイネケンのCSR報告の事例を紹介したが、今回ご紹介するのは、全く違う切り口で新たなCSR報告の形を作ろうとしている企業の取り組みだ。

英国を代表するデジタルテレビ・通信事業者の一つ、ヴァージン・メディアが新たに公表したのは、世界でも初めてとなる360°動画を用いたサステナビリティレポートだ。

同社は昨年7月、デジタル通信分野の企業としていかに社会にポジティブな変化を与えていくかをまとめたCSR戦略、「Digital for Good」を公表していた。5年間にわたる新たなCSR計画の中で掲げられたのは、デジタルテクノロジーを活用して英国内で暮らす社会的弱者の生活を向上させる、10万以上の中小企業を支援する、カーボン・フットプリントを増加せずにさらに400万以上の建物に高速ブローバンド環境を拡大する、などの目標だ。

そして今年の8月初旬、ヴァージン・メディアは第一回目となる「Digital for Good」の進捗状況をオンライン上で公表した。他社に先駆けて2010年からいち早く冊子でのCSR報告を廃止し、自社の強みでもあるデジタルメディアを活用したCSRコミュニケーションに積極的に取り組んできた同社のCSR報告は、とても洗練されている。

動画やソーシャルメディアの活用はもちろん、インフォグラフィックなども活用されており、読者に「届く」コンテンツ作りを意識していることがよく分かる。そんな同社がCSR報告における新たな試みとして公開したのが、冒頭でご紹介した360°動画によるサステナビリティレポートなのだ。

360°動画によるVRがもたらす没入感が「ストーリーテリング」に有効であることは、先日ご紹介した「VRから始まる素晴らしい現実『VR for Good』」でもお伝えした通りだ。

上記の動画を見ると、ヴァージン・メディアの取り組みがストーリー形式で語られており、実際に現場でハンディキャップを抱える子供たちを支援している社員の取り組みも臨場感を持ったリアルな映像として伝わってくる。360°動画の場合、ユーザーはただ動画を見るだけではなく、VR空間の中で視点を能動的に動かすことができるため、動画を見ている中で飽きることもない。

VRが持つポテンシャルをフルに活用すれば、伝え方についてはまだまだ大きく改善の余地があると感じられるものの、CSR報告の形を自ら積極的に再定義していく同社の姿勢から学べる点は多い。

CSRコミュニケーションの世界では、冊子などの一方的な情報発信からよりインタラクティブなコミュニケーションが求められるようになった。そして今ではそこからさらに一歩進み、自社が目指すビジョンとそれを実現するためのストーリーに、いかに登場人物の一人としてユーザーに参加してもらえるか、という点が重要視されるようになってきている。

より強いエンゲージメントを促すためのツールとして、VRをはじめとするテクノロジーが持っているポテンシャルはとても大きい。こうしたヴァージン・メディアのような新たな試みがトリガーとなり、さらに多くの斬新なアイデアが生まれることを期待したいところだ。

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