締切りは創造性を阻害する!?ダヴィンチも実践した創造性の高め方とは?

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仕事には締切り、期限がつきものだ。ドラマでは、期限の直前になり、追い込まれることで素晴らしいアイデアが出て勝利する、そんなシーンもよく目にする。

ただし、創造性研究第一人者ハーバードビジネススクールのテリーザ・アマビル教授に言わせると、こうした考えは神話にすぎないと結論づけている。

複数の企業で200人近い従業員と複数のチームを対象に半年間行った調査によると、下記のような結果が出た。

  • チームメンバーは締切りという強い時間的プレッシャーがかかると創造性が落ちる
  • 一方、それにも関わらず本人達は創造性が上がったと感じている

(少数ではあるが、いくつかの条件が満たされれば創造性が高まるというケースもあった。具体的には、会議・電話・メモなどの邪魔が入らずそのプロジェクトだけに集中でき、かつ一緒に作業する人も1〜2人で、時間のプレッシャーも本物であった場合とのことだ。ただこういった環境を実際の職場でつくるのは困難であろうが。)

筆者の経験だけでも、意思決定における判断力や、やることが明確な作業の効率については、時間の制約の中で研ぎすまされることもあるように感じる。一方、時間的な締切りが迫る中で、創造性に富んだアウトプットを出せた経験は確かにない。時間がないときほど安全で着地しやすいポイントを探している。

特に交差的アイデアを実現するには、時間をかけることが有効だ。それには理由が2つある。

1つは、アイデアの良し悪しの判断には時間がかかるためだ。特に交差的アイデアの場合は既存のフレームでは判断できないことがほとんどであり、また既存フレーム以外の評価が重要になってくることが多い。また、思いついたアイデアを仕組み(ビジネスモデルやプロセス)に落とし込んだ際の実現可能性などについての検証も時間がかかる。

2つ目は、創造性には潜伏期間があるということだ。一生懸命考えるのをやめてから、ある日突然に解決方法が浮かぶことがある。『アイデアのつくり方』の著者であるジェームス W.ヤングもアイデア発想の5段階の3段階目として「問題の放棄」というプロセスを入れており、その事柄に対して考え抜いたあとに意図的に考えない期間をもうけることを推奨している。

いいアイデアには時間が必要なのは分かった。だからといって、浮かんだアイデアを放置しておいたら忘れてしまう。どうしたらいいのだろうか。アイデアの判断のためにも、またアイデアの熟成のためにも有効なのが「メモ」を残すことだ。

かのレオナルド・ダ・ヴィンチがもの凄い数のメモを残していた「メモ魔」であったことをご存知だろうか。現存するだけでも5,000枚以上の手記があり、弟子に対して

「手帳はいつでも肌身離さず、持ってあるかねばならぬ。一杯になったらまた新しいのに化へて、古いものは大切に蔵つて、保存するがよい。〜中略〜なぜならば、自然に於ける人体の運動は、実に限りの無いもので、どんなに記憶のいい人でも、覚えきれないからだ。〜中略〜 このスケッチを優れた教訓者か、師匠のように思って眺めるがよい(メレジュコーフスキイ『神々の復活』)」

と語ったという。

人間は忘れる生き物だ。とにかくメモし、保存し、それを見返す。それがアイデアの熟成につながる。

メモには手帳を使うことも有効だろう。筆者の場合はWunderlistというスマホアプリを利用している。

To Doを項目別に作成できるアプリだが、この中に「アイデア」という項目をつくり、ふとした時に浮かんだアイデアをストックしている。ちょっとしたメモやURL、スマホで撮影した写真などもあわせて保存できるのでオススメだ。アイデアメモをさらに深化させたいときは、企画書かEvernoteを使うようにしている。時間とアイデアの性質を理解し、活用するためにも、自分なりのメモ・保存方法を確立してみてはいかがだろうか。

【参考図書】『アイデアは交差点から生まれる』/『超一流のアイデア力』/『アイデアのつくり方

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