「落書きする俺、ひょっとしてダサい?」公共バスの破壊を防止する、イタリアの一風変わったキャンペーン

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「行儀よくまじめなんて クソくらえと思った」「夜の校舎 窓ガラス壊してまわった」

かの有名な尾崎豊が、代表曲「卒業」で歌ったように、思春期真っ只中の若者の心境というのは、とても繊細ゆえに複雑なのかもしれない。子供と大人の間で揺れる心、自分というアイデンティティの模索、大人たちへの反抗。その有り余るエネルギーの矛先を一歩間違えれば、物の破壊、人への暴力行為というかたちを取ることもある。

イタリア・ラツィオ州の交通機関COTRAL社は、そんな荒ぶる若者たちの行為に頭を抱えていた。毎年何百台ものバスが、落書きや破壊・盗難などの被害に遭っていたのだ。年間10台の新車を導入するために、かかる費用は200万ユーロ(約2.6億円)。自治体や住民たちにとって、大きすぎる負担となっていた。

「落書き・破壊行為をやめさせるにはどうすればいいのか? 」エネルギーあふれる若者たちに、ただ「やめなさい」というだけでは届かない。むしろ、逆効果かもしれない。そう考えたCOTRAL社は、一風変わった取り組みを実施した。

彼らが着目したのは、通学用のスクールバス。同社のバスのうち40台を、“スクールバス風”の黄色のカラーにラッピングし、こんなメッセージを車体に大きく描いた。

「L’unico rimedio contro il vandalismo è crescere.(このバスへの破壊行為を止める唯一の方法は、あなたが成長することだ。)」

落書き等の破壊行為をする予備軍が目にしたときに、「これに落書きしようとしている俺/私って、ひょっとしてダサいのかも?」と羞恥心を感じさせるデザインにしたのだ。

さらに、より多くの若者への周知を促すため、ソーシャルメディアを最大限活用したこともポイントだ。Instagramの自社アカウントでこの塗装に関する投稿を行ったり、Twitterでこのバスの写真に関する投稿をリツイートするなど拡散に努めた。

また、「座席を買い替えたい?250ユーロ。」「落書きを消したい?35ユーロ。」のように、バス各部の修復にどれくらいの費用がかかるのか、具体的な数字で示すなどした。

すべての投稿に添えられたハッシュタグは、#sonosoldituoi(このツケはあなた自身が払うことになるんですよ)。これはバス本体にも書かれている。街中でバスを見かけた人々が「なんだろう?」とハッシュタグを検索することで、関連投稿に誘導される仕組みだ。結果、全国メディアからローカルメディアまで取り上げられるなど話題になり、合計15,000インプレッション、9,000いいね、700シェアを集めたという。

伝えたい思いがある。そんな時、ただ直球に相手に伝えるだけでは、上手くいかないこともあるだろう。どういうシチュエーションで、どういう言葉を贈れば、相手に伝わるだろう?COTRAL社の取り組みは、そんな工夫の重要性を思い出させてくれるキャンペーンではないだろうか。

適切なメッセージを選び、少し工夫することで、伝わる思いがある。まっすぐすぎる若者たちだけではなく、私たち一人ひとりにとっても、大切なことかもしれない。

【参照サイト】”The only solution to vandalism is growing up.”