人々にお洒落をする楽しみを与えてくれ、毎日の生活に彩りを加えてくれるアパレル産業が、実は水質汚染や気候変動の一因にもなっていることはご存じだろうか。
たとえば、服の原料である綿の栽培に使われる大量の防虫剤や化学肥料による生態系破壊や健康被害、さらに綿の栽培に使われる水資源の枯渇。このように環境への負荷をかけて作られた服にも関わらず、日本人は年間平均10キロの服を買って9キロ捨てているという。流行が過ぎた服は大量に廃棄され、服を着ている我々人間は服によって健康や安全を脅かされているという皮肉な現状があるのだ。
そんなアパレル業界の現状を打破するために作られたのが、ファッションを通じて環境に優しいノウハウを提供するエシカルなプラットフォーム「Fashion for Good」だ。Fashion for Goodは今月、スポーツ用品業界大手のアディダスとアパレル業界における持続可能なイノベーションを目指すためにパートナーシップを締結した。
Fashion for Goodが目指すのは、安全かつリサイクル可能な素材や、再生可能エネルギーの利用、そして公正な労働条件によってファッションに関わるすべての人に利益をもたらすアパレル業界だ。その実現に向けて、同プラットフォームではエシカルなアパレルベンチャー企業には一定のインセンティブや業界ノウハウを提供する活動などを行っている。
今回提携したアディダスは、新たなイノベーター選定への参加や、アパレルベンチャー企業への専門知識を提供と指導など、重要な役割を果たす。さらに、Fashion for Goodの幅広いネットワークを通じた市場の取り組みに関する優遇を受けるとともに、ファッション業界の問題意識を高めるために今秋に公開される体験型コンセプト空間「Fashion for Good Experience」の開発にも従事する予定だ。
アディダスの副社長であるJames Carnes氏は、今回の提携についてこう語る。「Fashion for Goodとの提携は、アパレル業界においてこの社会と地球環境を維持し続ける取り組みを強化し、消費者社会に大きな好影響を与えるネットワークを構築することに繋がる。」
アディダスという大企業がこの活動に賛同し、参加したことでこれからのFashion for Goodの大いなる発展が期待されるだろう。
ファッションを通した環境問題の改善という共通の目標のために、何ができるのかを業界全体でシェアするポジティブな取り組みに今後も注目すると共に、消費者である私たちも服のリサイクルを心掛けたり、セールにつられて無駄な服を買わないなど小さなことから始めることが、Fashion for Goodの取り組みを支えることになるだろう。
【参照サイト】Fashion for Good