菌を使って、コンクリートがひび割れを自分で治す。低コストでクリーンな自己治癒

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これまで世界の街の発展とともに、たくさんの建物が建設されてきた。しかし、建物は年月とともに老朽化していき、その修復費用は決して安くはない。特に、橋や道路などの公共物の老朽化は現在、社会的問題にもなっている。

アメリカのニューヨーク州立Binghamton大学の准教授Congrui Jin氏は先日、学術雑誌Construction & Building Materialsに研究論文「菌とコンクリートの相互作用。コンクリートのバイオ自己治癒作用の重要性」を発表した。この研究は、コンクリートの自己治癒作用のために初めて菌を使用した、低コストでクリーン、かつ持続可能なアプローチだ。

Jin氏は2013年からコンクリートに着目し、コンクリートの一番小さなひびから問題が生じることを発見した。Jin氏はこう語る。「適切に処置をしないと、ひびは大きくなり、修復が高価になることもある。小さなひびが大きくなって鉄筋に達すると、コンクリートが損傷を受けて、水や酸素もしくは二酸化炭素や塩化物にさらされて鉄筋も腐食し、構造欠陥を生み出すことになる。」

老化コンクリートに代わる構造を再度つくるコンクリート部材の交換は、再度ひびが生じるまでの短期間の処置に過ぎないとJin氏は考え、コンクリートの恒久的補修工法を探った。そして、Jin氏がたどり着いた答えが「Trichoderma reesei」という菌だ。このアイデアは「人の体は、負傷したり骨折すると自己治癒できる」という、人体の自己治癒能力からインスピレーションを受けたと、Jin氏は語っている。

この菌を使った、コンクリート自己治癒プロセスは以下の通りだ。まず、菌の胞子を栄養分とともにコンクリート混合物の中に入れて混ぜる。菌は一度コンクリートに混ぜると、最初のひびが発生するまで眠った状態になる。そして、コンクリートにひびが生じると、水と酸素が入り込む。十分な水と酸素を得た菌の胞子は生き返って成長し、炭酸カルシウムを凝結する。その後、ひびが完全に埋まって水と酸素が中に入れなくなると、菌は再び胞子に戻る。この作用を繰り返すのだ。

この研究はまだ初期段階で、最大の問題は菌がコンクリートの中という厳しい環境で生存できるかどうかという点だという。しかし、 Jin氏はこの菌をさらに調整していくことで、ひびを有効的に埋められるのではないかと考えており、「コンクリートの自己治癒のために、菌などの他の微生物を更に研究していくことは、とても大きな可能性を秘めている。」と語る。

無機物の象徴ともいうべきコンクリートに菌を混ぜて生命を与え、ひびを自己治癒させるというBinghamton大学の研究。低コスト、クリーンで持続可能なアプローチとして、これからの更なる研究が期待される。

【参照サイト】Using fungi to fix bridges