食料廃棄が世界で大きな問題になっているのは自明だ。日本は言わずもがなであるが、欧州諸国でも品揃えの「良すぎる」スーパーマーケットでは大量に出る廃棄食品が問題視されていた。そんな中、フランスが食品の大量廃棄を禁じる法律を2016年に施行し、代わりにそれらをチャリティに寄付するよう命じたことは先駆的な事例となっている。そしてフランスは、さらにその先へと進む意思を示した。食品だけではなく、ショップが売れない衣類を廃棄することも禁止するというのだ。
フランスの食料廃棄の禁止について、簡単に紹介しておこう。毎日、多くの食品が廃棄されるスーパーマーケットのゴミ捨て場は、ホームレスにとっては1日の糧を得るための重要な場所だ。しかし、ゴミ箱をひっくり返される側としては掃除などの手間もかかり、当然嬉しいことではない。
そのうち、フランスのスーパーマーケットはホームレスに漁られないようにゴミ箱に鍵をかけてしまった。その行為は経済合理性こそあれど、社会が許すものではなかった。どうせ捨てるものならば、チャリティへ寄付するよう法律で推奨されることとなったのである。
そして、衣類においてもこの波が来ている。ショップに売れ残った、まだ着られる衣服はリサイクルして使えるようにするか、チャリティに寄付するべきだというのだ。
衣類を大量に廃棄することへの人々の関心の高まりは、2017年の2月にナタリー・ボヴァルという女性がソーシャルメディアである画像を投稿したことから始まった。メンズアパレルブランドのCecioがまだ着られる服を引き裂いて捨てているセンセーショナルな画像と共に、彼女の怒りが込められた投稿に多くのフランス人が共感したのである。
彼女は投稿の中で「寒さで凍えて死んでしまう人がいるにもかかわらず、celioは売れなかった服を捨てている。必要としている人に届けるべきだ!」と訴えた。
フランスは食料廃棄において欧州でも指折りのリーダー国であるが、循環経済を目指す彼らの目指すゴールはまだまだ遠く険しい。今後はさらに電子機器や家具、ホテルといった分野でも同様のルールを制定するつもりのようだ。
まだ使えるものを廃棄するのではなく、それを必要とする人たちに提供する。最大の課題は企業に与えるインセンティブをどうデザインするかだが、政府としての明確な姿勢には強いメッセージがある。今後もフランスは、廃棄物の削減において成果を上げていくはずだ。