気候変動の対策に「一刻の猶予もない」ローマ法王が石油会社に発したメッセージ

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昨年、アメリカのトランプ大統領が各国パリ協定からの離脱を表明し、世界に大きな衝撃を与えた。私たちは今、気候変動に対してどのように取り組んでいくべきか問われている。

そんな中立ち上がったのが、バチカン市国の首長でありカトリック教徒の精神的指導者であるローマ法王である。2015年、フランシスコ第266代ローマ教皇は回勅「ラウダート・シ」で、気候変動は人類が直面している最も重要な課題の一つであると述べ、環境保全のために迅速に行動するよう人々に訴えた。そして2018年6月初旬、法王は再び気候変動に言及している。

「一刻の猶予もない。人類は気候変動により壊滅の危機に晒されている。」そう警告する法王は、Exxon Mobil、ENI、BPをはじめとする世界有数の石油関連企業の重役達をバチカンに招集し、クリーンなエネルギーへの転換を推し進めるよう彼らに求めた。

「文明はエネルギーを必要とする。しかし、エネルギーが文明を破壊してはならない。」

ローマ法王

Image via Unsplash

近年、石油・ガス産業に対し、投資家たちからのパリ協定で定められた目標の達成のため役割を果たすべきだという圧力が高まりつつあり、投資の撤退(ダイベストメント)を恐れる業界は対策を余儀なくされている。

たとえば、ノルウェーの石油大企業Equinorは先日公開した報告書の中でパリ協定の支持を表明し、気候変動対策の目標を達成するため、再生可能エネルギーの採用を世界中で迅速に進めていく必要があると述べた。

しかし、いまだに新たな埋蔵化石燃料の発掘が続けられているのもまた事実であり、それは「心配事」だとローマ法王は述べている。

石油関連企業に対してローマ法王が繰り返し求めたのは、「化石燃料への依存をやめ、効率が良く、かつ汚染の少ないエネルギー源の利用量をより増やすこと」だ。それは「新時代の均衡」への挑戦である。そして世界が気候変動に立ち向かい、社会的公正を推し進めるため、エネルギーミックス(多様なエネルギー源を組み合わせて電力の安定供給を行うこと)は必要不可欠であると述べている。

ローマ法王は、気候変動により最も被害を受けるのは、貧困層だと指摘。さらに、クリーンエネルギーへの転換は「私たちが世界中の同胞達、貧しい国々、そして次の世代に対して負っている義務」であると述べている。

「私たちは創造神から庭園として地球を受け取った。その地球を、次の世代に荒れた状態で渡すわけにはいかない。」

世界中に12億人以上の信者を持つカトリックの長であるローマ法王の言葉は、世界に大きな影響を与えることは間違いない。彼の言葉をどのように受け止め、これからどのように行動していくかは私たち一人ひとりに掛かっている。

【参照サイト】Pope warns energy bosses of global destruction without fuel shift
【参照サイト】Pope Tells Oil Executives to Act on Climate: ‘There Is No Time to Lose’

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