南米大陸の太平洋沿岸に伸びる、縦長い国土が特徴のチリ。サケの輸出など水産業が盛んで海洋汚染への意識が高いこの国では、8月3日に南米初となる商業分野でのプラスチック袋の使用を禁じる法律が公布された。
そのチリの起業家らが、石油のかわりに石灰石を用いてプラスチックを組成することで、環境を汚染しない水溶性のビニール袋を開発することに成功した。
「Solubag」と名付けられたこのビニール袋を開発したのは、Roberto Astete氏とCristian Olivares氏の二人だ。二人は当初、生分解性の洗剤を製造するための実験を行っていたが、最終的には水溶性のPVA(ポリビニルアルコール)に基づいてプラスチックを組成する化学式を見出した。これは、マイクロプラスチックの問題をはじめとして深刻な海洋汚染を引き起こしている既存の石油製品にとって替わる画期的な技術となる。
現在二人は従来のプラスチック袋の店頭使用が禁止になるチリでSoluBaの売り込みを計画しており、このほどチリの首都サンティアゴでは新しい化学式の有効性と、成分が環境汚染しないことを実証するデモンストレーションが行われた。
冷水の中でプラスチック袋、そしてお湯の中では布バッグがすぐに溶けることを実証した。 Astete氏は、水の中に残っているものは炭素であり、人体に何の影響も及ぼさないという医療検査の結果を説明し、同氏自らその水溶液を飲んでみせた。そして「産業の調査を行い、年間約1兆個ものビニール袋が世界中で使用されていることを考慮し、環境に有害ではない日用品をつくるというアイデアが実現した」と続けた。
従来のプラスチックは長くて500年間も環境にとどまる一方で、このSoluBagは5分程度で溶けてしまうため、環境への影響の差は歴然だ。ゴミとして廃棄する必要もなく、捨てたいと思ったら自宅の洗濯機などで水に溶かすだけでよい。
この化学式は、あらゆるプラスチック材料を作ることが可能のため、食器やプラスチック容器、医療用の衣服などの製造の準備も進めているという。Solubagは現在中国で生産しているが、化学式を変更するだけで十分のため量産は既存のプラスチック工場で行うことができるとのことだ。
また、水溶性となると雨天時の利用についても気になるところだが、Solubagは製造時に水溶する温度をプログラムできるため、心配ないという。もう一つの利点は、舌との接触や涙で溶けるため、乳幼児死亡の原因となる窒息も防げることだ。まさに、自然環境だけでなく人にも優しいプラスチック袋だと言える。
今後、プラスチック袋の禁止に二の足を踏んでいる国々にも普及し、世界の環境事情を大きく変えていくことを期待したい。
【参照サイト】Solubag
【参照記事】Chilean company creates water-soluble bag to fight plastic pollution
【参照記事】Solubag, el emprendimiento nacional ganador de SingularityU Chile Summit, revolucionará la industria del plástico