海洋に流れ着くプラスチックごみは、年間約800万トンと言われる。プラスチックは海洋生物への弊害となり、そして魚や貝などを食す人間にも大きな影響が報告されている。できるだけプラスチックごみを出さないようにすることが大切なのだが、一度商品として流通した後に一人ひとりの行動を管理することは不可能に近い。
流通業者側としても、リサイクルが大切だとわかっていないわけではない。しかし、それにより消費者の利便性が損なわれたり、収益の低下につながったりする可能性を懸念し、会社の利益を考えるほど身動きができなくなっているのが現実だ。
5大世界流通大手の一つであり、英国を中心にスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどを展開するTESCOはこの程、プラスチックごみを減らす努力の一環として、自社製品の水ボトルの容器をプラスチック製からアルミ製に一新した。これは英国のスーパーマーケット大手4社で初めてのことである。
「CanO Water」と名付けられたこのアルミ缶は、利用者の不便がないように、一度開封した缶を再び閉じることができるフタがついた優れものだ。通常、缶は中のジュースを飲み終えれば捨ててしまうが、CanO Waterは使用後も水を入れて水筒として便利に利用できる。
透明のペットボトルは、ピュアで質の良いイメージを伝えられることや、持ち歩きに便利だという利点があるかもしれない。しかし、ペットボトルではなく環境にやさしい代替品を使用することは、今後ブランディング上の利点にもなってくるだろう。
このアルミ缶の提供元のCanO Waterの共同設立者、アリエル・ブッカー氏は「アルミ缶は、あらゆる製品へのリサイクル率が最高水準です。リサイクルされた缶は、わずか60日で別のものに生まれ変わり、再び商品棚に並ぶのです。」と述べる。
ペットボトルなどのプラスチックごみのリサイクル率は約10数%。近年上昇がみられるものの、アルミのリサイクル率は約70数%と段違いだ。また、原料のボーキサイトから新たにアルミの地金を製造するより97%もエネルギーを節約することができる。この効率の良さが、リサイクル率の高い理由でもある。
TESCOの他にも英国では、同国のデパート2位のSelfridgesが、2018年に入って使い捨ての炭酸飲料ボトルを廃止し、アルミ缶の使用を開始すると発表した。
労働者階級と上流階級に住民が大きく二分されているといわれるイギリス。低価格でお手頃な商品を揃えて一般市民に高い支持を受けるスーパーのTESCOと、お洒落なデザイン等、こだわった商品が、高所得者に支持されるデパートのSelfridgesでの、このような同調する動きは、英国で幅広い層にリサイクルや環境意識が広がっていることの証ではないだろうか。
【参照サイト】CanO Water