通勤途中にカフェでコーヒーを買い、紙カップを片手に出勤…… 。そんな日常のありふれた光景が、今後変わっていくかもしれない。
多くのカフェで提供される使い捨ての紙カップは、汚れるとリサイクルが難しく、使用後はただのゴミになる。近年、環境への影響を考慮し、自宅からボトルやタンブラーを持参する人も増えてきてはいるが、大多数の人々は紙カップに依存している現状。
そこに目を付けたのがアメリカのスタートアップ企業Vessel Works(以下、Vessel)だ。同社がコロラド州、ボルダーで開始したのが、ステンレスマグの貸し出しサービスである。利用方法は簡単。Vesselと提携しているカフェでコーヒーをテイクアウトする際、紙カップではなくVesselのステンレスマグで提供してもらうだけだ。
飲み終わった後は提携先のカフェか街中のキオスクでマグを返却する。5日以内にマグを返却しなかった場合のみ、料金が請求されるが、基本的には無料で利用できるサービスだ。現在4つのカフェが参加しており、今後拡大を目指しているという。
スタイリッシュなデザインのVesselのステンレスマグは、紙カップと異なり保温性が高いため、よりおいしくコーヒーを味わうことができる。また、自前のボトルを利用する場合、通常使用後は自分で洗わなければならないため、手間を感じて躊躇してしまう人も多い。しかしVesselのマグは利用者が洗う必要はなく、帰宅途中にキオスクで返却するだけなので、より手軽に始められる。費用や手間を考えても利用者に負担が少なく、メリットを感じられるサービスだ。
さらに、専用アプリでは自分のVesselの利用状況と、それによりどれくらいゴミを減らすことができ、CO2の発生を防げるかを見ることができる。自分が環境改善に貢献できている実感がわくことで、モチベーションも上がるだろう。
また、カフェがVesselに支払う利用料は紙カップの仕入にかかる費用よりも安く、マグの回収、洗浄、補充も同社が行うので、カフェにも負担はない。「みんなが得をするサービスを作りたかったのです。」Vesselの創設者、ダグニー・タッカー氏はこう述べる。「私たちは、業界全体の現状を変えていきたいのです。」
たとえば、スターバックスのような大きなチェーン店でこの仕組みを導入するには、まだ課題が残る。大手チェーンは紙カップをより安く仕入れることができるため、Vesselを利用するのは費用面でデメリットとなってしまうのだ。Vesselの今後に期待するとともに、他企業や私たちひとりひとりの意識も変えていかなければならないだろう。
【参照サイト】Vessel Works