季節の変わり目には、不用品を整理する方も多いのではないだろうか。もし、その中に羽毛の布団や使い古したダウンジャケットがあったら、これから紹介する羽毛のリサイクルプロジェクト「Green Down Project」への参加をぜひおすすめしたい。
本プロジェクトは、羽毛をエコなダウンジャケット等に生まれ変わらせるリサイクル企画だ。要らなくなった羽毛布団やダウンジャケットを捨てるのではなく、ショッピングモール内のファッションブランドや自治体などに持ち込むことで、新たな製品をつくるために使われるようにする。筆者は、Green Down Projectの代表理事を務める長井一浩さんに話を聞き、このプロジェクトの魅力にせまった。
取り組みのはじまりは、長井さんが2011年に松坂市社会福祉協議会で働いていたときに、羽毛製品をリサイクルした製品の販売収益の一部が「赤い羽根共同募金」に寄付される仕組みをつくったことだという(※1)。
羽毛は、食肉用の水鳥から採取される副産物だ。再生可能な素材だがリサイクルの仕組みが整っておらず、そのほとんどが捨てられ焼却処分されている。貴重な天然素材を燃やしてしまうのは、実にもったいない話だ。そこで「羽毛循環サイクル」を確立し、より多くの人たちを巻き込むため2015年につくられたのがこのGreen Down Projectだったのだ。
羽毛リサイクルは三方よし
羽毛のリサイクルにはさまざまな利点があるが、主に挙げられるのは以下の3点だ。
1. ごみを減らしてCO2排出を抑える
羽毛製品を捨てずにリサイクルし、ごみ発生を抑える。Green Down Projectによると、羽毛1kgの焼却により約1.8kgのCO2が発生してしまうというが、それもごみとなる羽毛を減らせば、環境負担を軽減できる。
2. 障害を持つ人々の雇用創出にも貢献
回収された羽毛の解体・選別作業は障がい者施設で行われている。このプロジェクトが広がり羽毛の回収が増えることで、それだけ雇用も増やすことができるというわけだ。
3. 安全な製品の安定供給
リサイクルされた羽毛は新毛と違い、鳥インフルエンザや食肉需要の影響を受けにくい。多くの羽毛布団やダウンジャケットが運び込まれれば、安全な羽毛の安定供給につながるという。
近年、羽毛製品の需要は増え続けている。羽毛布団は国産、輸入物を合計すると年間約300万枚以上が販売されている。羽毛のダウンジャケットも普及し、最近では低価格なブランドでもみられるようになった。
こうした需要の急増による弊害として、廃棄物の処理に伴うCO2発生のほかに、羽毛採取を目的として水鳥から生きたまま毛をむしる「ライブハンドプラッキング」という手法が出てきており、アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から問題視されている。羽毛をそのまま次の製品に使うことができれば、このような過剰需要がもたらす問題の改善の一助にもなるだろう。
グリーンダウンの気になる衛生面
すでに一度製品として使われた羽毛をリサイクルしたグリーンダウン。衛生面が気になる方もいるかもしれないが、実は新毛よりも“きれい”になっているという。
理由は二つ。一つは、長年使われてきた羽毛同士が擦れ合って、もともと新毛についていた垢が取り除かれるため。もう一つは、出荷可能な新毛の清浄度がJIS規格で500mm以上のところ、グリーンダウンは2000mm以上と高い基準を設けているためだ。
長井さんによると、最近のエシカル消費への関心の高まりから消費者のグリーンダウンに対する反応は好意的で、メーカーの反応もよく、供給があれば引き手がある状況だという。また、回収される羽毛も年々増えている。2018年度は30トンほど。羽毛布団に換算すると約3万枚分にもおよぶ。
リサイクルされた羽毛は、現在13ブランドで製品化されている。冬物のダウンジャケットなどを探している方は、ぜひ最後に紹介するGreen Down Projectのウェブサイトをチェックしてみてはどうだろう。
一人でも多くの共感と行動を
今後の課題は「羽毛の回収拠点を増やすこと」だと長井さんは語っていた。現在、Green Down Projectの回収拠点は都市部のショッピングモールが多い。拠点がさらに増えれば、輸送による環境負荷とコストを抑えられる。
加えて、回収拠点で解体作業ができれば、羽毛だけを運ぶことができるのでさらに環境負荷を下げ、雇用も増やすことができるという。現在、大型店舗などで回収拠点を設置したい、という問い合わせもあるそうだ。
ただ、今後さらに回収量を増やしていくためには、ごみの回収をしている自治体の協力が欠かせないという。自治体はリサイクル推進などを目標に掲げている場所が多いため、羽毛製品を分別するほんの一手間に協力してもらえたらありがたい、とのことだ。
こうした企業や自治体などの協力を得ていくには、認知度のアップもはかる必要がある。「一人でも多くの方に、羽毛はリサイクルできる資源だと知ってほしい。そして羽毛製品の提供という形でぜひ行動してほしい。時間はかかるかもしれないが、ペットボトルなどと同じように羽毛もリサイクルの仕組みをつくりたい」と長井さんは熱く語った。
手元の羽毛製品を捨てるのではなく、リサイクルできるものならしたい、と考えていないだろうか。本プロジェクトでリサイクルできる羽毛製品の条件は、ダウンが50%以上使用されていることだけだ。穴があいたり、汚れたりしていてもかまわない。
「Green Projectは、共感と行動で成り立つプロジェクトなんです。」と長井さん。羽毛循環サイクルをつくる輪に、あなたもぜひ参加してみてはいかがだろうか。
プロジェクトへの参加はこちら→Green Down Project 羽毛回収場所リスト
※1 UMOUプロジェクト 概要
【参照サイト】Green Down Project
【参照サイト】ダウンの作られ方 – 認定NPO法人 アニマルライツセンター