ニューヨーク、男性トイレにおむつ交換台の設置を義務化。育児負担の軽減に挑む

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近年、日本では企業による男性の育休取得奨励といった制度整備が進むなど、男性の育児が注目されている。実際に厚生労働省の「平成29年度雇用均等基本調査」を見てみると、男性正社員の育児休暇取得者は全体の7.5%となっており、12年前と比較すると15倍にも増えている。こうした背景もあり、「男性の育児参加」や「イクメン」という言葉も当たり前に聞くようになった。

一方、これらの言葉には、女性が育児をするのは当たり前で、男性の育児は女性の補助だという前提があるのではないかという議論もあり、いまだ育児の負担について男女の捉え方に偏りがあるのが現状だ。

そんな中、「女性トイレだけにおむつ交換台があるのは、おかしい」と男女の育児負担の偏りという社会課題に切り込んだのがニューヨークだ。

2019年元日、ニューヨーク州は今後建設される建物・施設すべての男性トイレに最低1台のおむつ交換台設置を義務付ける法律を施行した。新しく建設される建物、施設とは商用ビルから公的施設、公園などを指す。

空港のトイレ Image via Shutterstock

男性トイレのおむつ交換台設置は、女性の育児負担軽減だけでなくさまざまなメリットがある。汚れたおむつが原因となる疾病(発疹や感染症、腎臓の疾患や発達障害)の予防や、LGBTのカップルや父子家庭の父親が数少ない共用トイレを探す手間の軽減、さらに声なき声に耳を傾ける都市であることのアピールにもなる。

だが、ただおむつ交換台を設置するだけでは男性の使用者数が増えるとは限らない。真の意味で育児負担の軽減を実現するためには、インフラの設置をゴールとするのではなく、男性が周りの目を気にせずおむつ交換台を使用できるような配慮も必要になるだろう。

ニューヨークは地下鉄とバスで「ladies and gentlemen」のアナウンスの廃止や、共働き夫婦支援の先駆けとなる都市を目指す今回の政策など、ジェンダーの課題解決に向けた改革に積極的である。少子高齢化対策として女性が子育てしやすい環境を目指す日本もニューヨークの姿勢を見習いたい。

トイレ事情、ジェンダー観といったデリケートな話題だからこそ、見て見ぬふりをするのではなく、確実に男女の育児負担軽減に繋げていかなくてはならない。

【参照サイト】 Governor Cuomo Announces Passage of Legislation to Ensure Equal Access to Diaper Changing Stations

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