年間550万人を超える観光客が訪れるアジア屈指のリゾート地、バリ。アジアンテイストなこの地上の楽園は訪問者を虜にしているが、実はプラスチック問題も深刻だ。たとえば、バリ島のクタビーチでは、食品トレーやストロー、ビニール袋などのプラスチックゴミが海岸線が見えなくなるほどに積もり、インドネシアは世界第2位の海洋ゴミ排出国であるといわれている。
そんな中、自然との共生をテーマにしたバリ島のPotato Head Beach Club内にゼロウェイストのレストラン「Ijen(イジェン)」が誕生した。
ljenは、店内のフロアからメニューまでのすべてがサステナブルなリサイクル素材で作られている。たとえば家具は、オートバイからのリサイクル素材や無垢材から作られており、床は割れた飲料グラスや皿でできたものだ。
そして肝心の食材は、シェフによって厳選された逸品である。シェフのWayan Kresna Yasa氏は、長い時間をかけてオーガニックや地元産の素材を選定しており、使われる魚は必要な魚だけを獲る「一本釣り」の漁師から仕入れているという。もちろん、ヴィーガン(ビーガン)やベジタリアンメニューも豊富だ。
自然との共生に配慮している点は、内装や食材だけではない。食材の廃棄はオーガニックと非オーガニックに分けられ、「地元の豚の飼料」または「Ijenの敷地内でコンポスト」されるという。乾物もバリ島のリサイクルシステムで完全に再資源化されるというのだから驚きだ。
運営会社であるPTT Familyのコミュニケーションディレクター、Karen Day氏は「このゼロウェイストレストランがモダンでオシャレになることを証明したかった」と語る。
一般的にゼロウェイストもしくはそれに近い形にしようとすると、デザインがおろそかになりがちである。Ijenが注目されている理由は、ゼロウェイストとモダンでオシャレなインテリアを同時に実現していることにある。実際、Ijenには海外のレストランからどのようにしてゼロウェイストを実現しているか問い合わせが多数入っているという。
数多くの観光客が訪れるバリだからこそ、多くの利用客に大きなインパクトを与えることができる。Ijenの利用客は、自分たちのライフスタイルを見直すきっかけにもなると同時に、サステナブルなライフスタイルはオシャレな感性を犠牲にしなくても実現可能であることを学ぶことができる。
Ijenのようなゼロウェイストやパッケージフリーのお店はヨーロッパを中心に増えつつある。日本にも波が押し寄せてくることを期待したい。
【参照サイト】 ljen公式サイト
【参照サイト】 lonely planet 2018年12月13日号記事
【参照サイト】 THE SPACES 2019年1月14日記事