アウトドア用品ブランドのパタゴニアが、ビールをつくり始めた理由

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フリースやシャツ、バッグなどアウトドアで使う身の回りのものを販売するパタゴニアがビール業界に参入しているという。 同社のビール商品のラインナップは、昨年販売を開始した「ロング・ルート・ペールエール」と今年の4月から販売となった「ロング・ルート・ウィット」だ。

味わい深い「ロング・ルート・ペールエール」から一転、軽く爽やかな印象の「ロング・ルート・ウィット」は女性にも飲みやすく、スポーツ後もごくごく飲めそうだ。しかし、なぜパタゴニアがビール業界に参入したのだろうか。

「ロング・ルート・ウィット」と「ロング・ルート・ペールエール」(左から)

「ロング・ルート・ウィット」と「ロング・ルート・ペールエール」(左から)

私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。

その裏側には2018年12月に変更した企業ミッションがある。「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」。このミッションに従って、アウトドアウェアに留まらない挑戦を始めたのだ。

遡ること1950年代、登山家でパタゴニア創業者のイヴォン・シュイナード氏がクライミングの道具を作っていたのがパタゴニアの始まりだ。旅をする中で自然が壊されていく様子を目の当たりにした彼は、自然保護論者のデビッド・ブラウアー氏による「死んだ地球からはビジネスはうまれない」という言葉に感銘を受けたという。

そこでパタゴニアのアウトドアウェアづくりを見直してみると、 シャツの素材である綿花の収穫に使う枯葉剤が環境破壊に繋がっていたり、 紡績工場では労働環境の問題を抱えていたりしていることが分かった。そしてパタゴニアは23年前から無農薬で化学肥料や枯葉剤を使わないコットンに変え、都度フェアトレードにも取り組んできた。 2019年秋冬のコレクションでは商品の70%がフェアトレード認証を取得しているという。しかしそれだけでは対応できていない、喫緊の課題がある。気候変動だ。

気候変動

Image via ShutterStock

気温上昇の角度は1980年からの40年間で大きく変わった。2020年代を生きる私たちは気候変動を最初に目撃し、解決できる最後の世代と言われる中、危機的な状況を根本から救う解決策が必要である。その切り口として、パタゴニアは現代の農業に注目している。伝統的な農業では空気中の二酸化炭素を土の中で閉じ込められていたが、現代の農業では化学肥料の使用や森林伐採により土の中の根や微生物などの有機物が減り、炭素は土の中に固定されなくなってしまった。その結果、いまや農業は二酸化炭素排出量のシェアが他の産業に肩を並べているのだ。

パタゴニアが推し進める「環境再生型有機農業」とは?

そこでパタゴニアが力を入れるのが「環境再生型有機農業」だ。有機農業をベースとし、光合成の活性化と、炭素が外に出ないようあえて「耕さない」農法を進める。この農法にピッタリな作物が穀物の「カーンザ」である。カーンザは長い根を持つ多年草のため、3~4年間かけて成長し、その間土壌は豊かになるのだ。

環境への考慮だけでなく、ビールの味にも力を入れた。パタゴニアはポートランドのクラフトビールの有名な醸造所である「ホップワークス・アーバン・ブルワリー(HUB)」と共同してビールを制作することに決めたのだ。同社は店内で使用する電力を100%再生可能エネルギーにしており、社会的・環境的使命を負った企業であることを証明するBコーポレート認証をもつ。そのため缶にはBコーポレート認証のマークが施されている。

Bコーポレート認証

缶の下の方にBコーポレート認証のマークが。

パタゴニアのこれから

このように、パタゴニアは「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションに変更することで、アウトドアウェアに留まらない事業に踏み切ったのだ。さらに「2025年までに縫製工場や農家といったサプライチェーンやイベントを含めた、カーボンニュートラルな体系をつくる」という目標を目の前に見据えている。

ビール製造業だけにとどまらず、現在15種類を超える食品も揃えているが、どれもオーガニックで美味しく、冷蔵庫に入れる必要のない常温保存が可能な商品ばかりだ。新しいビールに合わせて手軽に楽しめるだろう。今後もどんな商品が出てくるのか、楽しみにしたい。

昨年販売を開始したムール貝の缶詰

昨年販売を開始したムール貝の缶詰

編集後記

「これからも長くアウトドアウェアを売り続けるために、アウトドアを楽しめる豊かな地球環境を守らなければならない」といったパタゴニアのミッションはとても納得感がある。だからこそ、パタゴニアがアウトドアウェアを扱ってきた中でビールを売っても、その中には一貫したミッションがあることが分かる。商品を使えば使うほど地球環境がよくなるなら賛同したい、協力したいと思わせられる。

環境に目を向けながら、時代の流れに沿って方向転換していくグローバルカンパニーの姿勢はますます目が離せない。

【参照サイト】パタゴニア プロビジョンズ
【参照サイト】パタゴニアのミッション・ステートメント
【参照サイト】GREENHOUSE GAS EMISSIONS from Agriculture, Forestry and Other Land Use
【関連ページ】Bコーポレーションとは・意味