クルマ離れが叫ばれて久しいが、まだまだ車が手放せない地域も多い。日本の自家用車の保有率は1世帯あたり「約1.069台」だそうだ(※1)。当然のことながら車には4つのタイヤが付いており、車で長く走っていると摩耗したり、ヒビが入ったりして安全走行が難しくなるため交換が必要である。しかし交換されたタイヤの「その後」について考えたことはあるだろうか?
イギリスでは、毎年約4000万本のタイヤが廃棄されている。英タイヤ回収協会によると、熱利用や、再生ゴムなどの原形加工利用などのリサイクルも多く行われているが、その何割かは他国(中国、インド、パキスタン等)へ輸出されたり、埋め立て地に行ったりするという。
その現状を受け、インフラ技術会社Tarmacが 廃タイヤをアスファルトの道路にリサイクルする国内初の取り組みをはじめた。Tarmac社はイギリスに拠点を置き、持続可能な建築資材を開発する会社だ。日本やアメリカでは、すでにアスファルトにゴムが一部使用されているが、イギリスではこの種の材料づくりに必要な産業インフラがまだ不足していたことが、今回の開発の背景にある。
Tarmac社が開発したのは、廃タイヤを原料とするゴムチップを使用したアスファルト合材だ。道路の厚さにもよるが、高速道路1キロメートルあたり最大750本の廃タイヤを利用できると同社は見積もっている。これは、イギリスから輸出される年間12万トンのゴム廃棄物を大きく減らすことになる。
今回、実験としてイギリス中部のコヴェントリー市でゴム粒子を添加したアスファルト道路が導入された。同市の高速道路技術課シニアエンジニアであるロブ・リトル氏は、「将来、廃タイヤを埋め立てや焼却から救い出し、わが市の道路建設プロジェクトのCO2排出量削減に役立てるようにしたい。このアスファルトを、街中でさらに多く使えるようになることを願っている。」と語る。
Tarmac社は毎年870万トンの廃棄物をリサイクルして、循環経済に貢献する取り組みを行っており、この廃タイヤリサイクルはその一環である。同社のテクニカルディレクター、ブライアン・ケント氏は次のように述べる。「プラスチックのリサイクルはメディアの注目を集めているが、タイヤは依然として見過ごされている“大切な廃棄物”だ。われわれが開発した新たなアスファルト合材は、建設業界により持続可能な選択肢をもたらすだろう。」
イギリス国内ではじめて、捨てられるタイヤをアスファルト道路に活用する取り組みがはじまった。今回の開発が、さらなる循環経済への貢献につながることを願う。
※1 自動車検査登録情報協会の2015年の調査
【参照サイト】Rubber roads pave the way for tyre recycling as Tarmac expands asphalt range
【参照サイト】日本自動車タイヤ協会
(※画像:Tarmacより引用)