ニューヨーカーにはお馴染み?ただ捨てるより、ちょっと良いことしよう。散歩ついでのお手軽コンポスティング

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2017年、「過去5年分のゴミをたった1つのメイソンジャーに収めた」ニューヨーク在住の女性が話題を集めた。彼女の名はローレン・シンガーさん。大学時代に環境学を専攻し2012年からゼロウェイストなライフスタイルをはじめたという彼女は、自身のブログやインスタグラム、YouTubeなどを通し、「ゴミを出さないヘアケア ルーティーン」「旅行時にゴミを出さないようにするには」といった、誰もが今すぐマネできるようなゼロウェイストライフのアイデアを紹介しつづけている。シンガーさんの提案するオシャレでエコなライフスタイルに影響を受けたニューヨーカーも多い。

アメリカでは(州にもよるが)ゴミを細かく分別せずに捨てるのが一般的である。生ゴミや、紙屑、汚れたビニール袋など、日本でいうところのいわゆる燃えるゴミも燃えないゴミも全て一緒に埋め立て地へ送られているということだ。こうしたゴミ処理法により様々な物質が混ざり合ってしまうことで、本来なら比較的簡単に土に還せたはずの野菜の切れ端などまでうまく分解されなくなってしまうのだという。

そこでニューヨーク市で行われているのは「コンポスティング(生ゴミの堆肥化)」だ。野菜の切れ端や果物の皮といった生ゴミから有機肥料を作り、土に還すという活動が行われている。アメリカにおけるコンポスティングの歴史は古い。19世紀半ば、土地の乱用により、土壌の栄養素が枯渇、アメリカ(特に東海岸側)において農作物の生産が大幅に減少した。その際、よりサステナブルな農産を行おう、と始められたのがコンポスティングだった。

コンポスト

Image via shutterstock

現在、公園や週末の屋外ファーマーズマーケット会場などニューヨーク市内の100箇所以上にコンポスター(堆肥化を行う容器)が設置されている。野菜の切れ端やパスタ、パン、卵やナッツの殻、コーヒーかすやティーバッグなど肉や魚以外であれば様々な生ゴミを回収してもらうことができる。自宅に設備を持たなくても、簡単にコンポストができるのが魅力的だ。

コンポスターの利用方法はとても簡単。料理をする際に出た野菜の切れ端や果物の皮などを集めて、近所のコンポスターに持っていくだけだ。回収日までに出た生ゴミは、自宅の冷凍庫で保存しておくと特有のニオイの発生を防ぐことができる。最初は面倒に感じられるかもしれないが、たったひと手間で不快なニオイを防げるのだし、慣れてしまえば大して気にならないだろう。

コンポスターの中身は収集されたのち堆肥化され、地元の都市農業やガーデニングに利用されるという。

ニューヨークで廃棄されるゴミのうち食品ゴミが占める割合はなんと21%。これらが、ただ埋め立てられるだけなら、温室効果ガスのムダな排出に貢献してしまうことになる。市のゴミ処理コストもかさむ一方だ。しかしコンポストなら、ただ捨てられるだけだったはずのゴミを、肥料という有用なモノにつくりかえることができる。肥料によって土壌の質が良くなれば、農作物の栄養価も高まるし、それらを口にする私たちの健康状態にまで良い影響を及ぼすことになるかもしれない。

コンポスト

GrowNYC(環境団体)の報告によると、 ニューヨーク市では2011年から2017年の間に450トン以上の食品廃棄物を回収することに成功したという。Image via GrowNYC Miryam Shemwell

日本の場合、生ゴミは燃えるゴミとして焼却されるのが一般的だ。焼却時の熱を発電に利用する(サーマルリサイクル)ことで、廃棄物を有効利用しようという取り組みも見られるが、「発電量が上がるから多くのゴミを出しても良い」という考え方につながってしまっては本末転倒である。

いきなりシンガーさんのような生活に切り替えるのは難しいかもしれないが、生ゴミをゴミ箱の代わりにコンポスターに入れるだけなら、気軽に始められそうだ。現在、様々な自治体のホームページで、段ボール箱と基材(ピートモス、もみ殻くん炭、おがくず、落ち葉、腐葉土など)を利用した「段ボールコンポスター」の作り方が紹介されている。「まずは気軽に試してみたい」という人は、ホームセンターで手に入る素材を使って簡易的なコンポスターを自作してみても良いだろう。

ゴミを減らしながら「活かす」コンポスト。あなたも生活に取り入れてみてはどうだろうか。

【参照サイト】New York Magazine ‛All My Trash Fits in a Single Mason Jar’
【参照サイト】Organics Collection NYC
【参照サイト】GrowNYC
【関連ページ】コンポスト(堆肥化)とは・意味

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